伝え、教え、笑わせる僧侶に聞いたお坊さんの「これから」|永田弘彰さんインタビュー<後編>
(写真提供:永田さん)
嫌なことも楽しいことも!受け止め方は「線」が大事|永田弘彰さんインタビュー<前編>
――布教使・宗教科教員・漫才……と多岐にわたってご活動されていますが、それぞれ始めるきっかけになった出来事があれば教えてください。
永田弘彰さん(以下:永田):布教使資格は龍谷大学実践真宗学研究科で取得いたしました。
浄土真宗は法話、聴聞、伝道に主軸を置いているので、学びを止めないためにも布教の現場に立ち続けたいと思ったんです。
宗教科の教員については、父と祖父が教員だったことが大きなきっかけですね。私が物心ついて最初に抱いた将来の夢でもありました。高校時代に父を亡くし、すぐ住職にならなければいけなくなったので一度諦めたのですが、大学に進学して、せっかくなら一つでも多く資格取りたい、そして「教壇に立つ」という夢を果たしたい、と思い直し取得しました。その教員免許のおかげで現在、地元にある大谷派宗門校の帯広大谷高校からご縁をいただき、非常勤で宗教科の教壇に立たせていただいています。
実は、教員と同じくらいお笑い芸人への夢も強かったんです。高校卒業後は本気で芸人を目指そうとしていましたね。
その矢先、先述の通り父が亡くなり、お笑い芸人を目指している場合ではなくなりました。でもお寺に戻ってから、住職として、皆さんに喜んでもらえる方法を考え、思いついたのが漫才と法話を掛け合わせた漫才法話だったんです。
わざと仏教において間違えたことを言って、ツッコミで説法をする。普段皆さんが疑問に思っていそうなことをQ&A方式で法話にしていくというスタイルは、実際やってみて非常に相性が良いと感じました。M-1にも出場したんですよ。
――M-1というと漫才のM-1グランプリのことでしょうか?すごいですね!
漫才法話を通して気づきはありましたか?
永田:やっぱり認知されないと始まらないということでしょうか。しれっと始めても意味がないと思っています。M-1 に出場したのも皆さんに認知していただくという目的がありました。実際そのことは地域の新聞に取り上げられたり、またその後私が主催をした漫才法話グランプリ(通称:MH-1)も NHK に密着取材していただいたりして、知名度は一気に上がりましたね。
――ご活動の中、大切にされていることを教えてください。
永田:お寺の現場に身を置くようになって、お寺は「こういうもの」という固定概念が強い印象を抱きました。
例えば、法要の案内一つでも、時間や曜日設定を工夫しています。以前は平日の午前中から夕方まで実施していましたが、それでは来られない方も多かったので、午前の部と午後の部に分けたり、2時間程度で終了するようにしたりして、参加しやすい設定を考えています。
また、お寺の専門用語はやっぱりお寺の人間にしかわからないものが多いですよね。「お味わい」という言葉一つ取ってもいまいちピンとこない方が多いと思います。なので、私は法話をするとき、いつも高校の教室で話していることを想定して話しています。17歳の今日、初めて法話を聞く人でもわかるように心掛けていますね。
――17歳という基準は、実際に永田さんが教員として教えられているから設定されたのですか?
永田:そうですね。17歳といえばちょうど大人に差し掛かる思春期で多感な方たちです。これから社会に出ていくこの層に上手く伝えるというのは伝道において非常に重要な事だと思っています。そう意味では日頃から教壇でその試行錯誤をさせていただいておりますね。
(写真提供:永田さん)