兎角[とかく]の意味とは?【くらしの仏教語豆事典】
兎角[とかく]…あの文豪が多用して広まった
「智に働けば角(かど)が立つ。情に棹(さお)させば流される。
意地を通せば窮屈(きゅうくつ)だ。兎角に人の世は住みにくい」
夏目漱石(そうせき)の『草枕(くさまくら)』の冒頭の名文です。
「とかく浮世(うきよ)はままならぬ」
「とかく人間というものは」
「彼には、とかくの噂がある」
と、「とかく」はいずれにしても・ややもすると・あれこれ等を意味し、
とにかく・ともかく・とやかく等に転化された副詞です。
この「とかく」を「兎角」と書くのは、当て字だそうです。
仏教には「兎角亀毛(とかくきもう)」という言葉があります。
「兎(うさぎ)の角(つの)」や「亀の毛」は、
本来実在しないものですから、
現実には無いのに、有ると錯覚したり、
実体が無いのに、有ると幻想したりするとき、
比喩(ひゆ)的に用いられる語です。
仏教の中心思想である「縁起(えんぎ)」や「空(くう)」を説くときよく使われ、
迷いの世界の現象を表す言葉となっています。
それが何故「とかく」の当て字になったのかわかりませんが、
兎に角、錯覚や誤解ばかりしていると、この世は、よけい住みにくくなりますぞ。
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掲載日: 2013.02.20