教えは香りのように身につく【釈尊のことば】
教えは香りのように身につく【釈尊のことば】
(『本願寺新報』 2015年(平成27年)7月20日(月)号より)
釈尊のお口からでた美しい偈ですね。唱えていると、香木や花の香りが伝わってきそうです。栴檀(せんだん)は白(びゃく)檀のこと、ジャスミンも伽羅(きゃら)や白檀と同じように、お香の材料になる香木です。歴史的に見ると、アジアでは主として香木を材料にしてお香が、地中海世界ではさまざまな花を使って香水が作られてきたようです。古代日本では、お香を焚(た)いてその上に着物をかぶせ、着物に香りづけをしました。香木を焚いてその香りを楽しむなんて、素晴らしい!
さて、仏教では「聞法」つまり「教えを聞く」ということが大変に重要なこととされます。釈尊のお弟子を「声聞(しょうもん)」といいますが、意味は「教えを聞くひと」です。「教えを聞き、よく思惟(しゆい)し、禅定(ぜんじょう)を修めること」が智慧を体得する条件だったのです。
そして、大切な教えを幾度も繰り返して聞き、その教えが芳(かんば)しい香りのように身体に染みついていくことを「聞熏習(もんくんじゅう)」と言います。「熏習」の「熏」は「薫」と同じで、香りが身に染みこむこと、「習」は繰り返すことで習慣になることです。インド仏教の『摂(しょう)大乗論』という著作には、「最(きわ)めて清浄なる法界(しんりのせかい)より等流(ながれ)でてくる(響きを)正しく聞きとめ熏習されていく」という有名な句もあります。
親鸞聖人も『浄土和讃』で「染香人(ぜんこうにん)のその身には香気(こうけ)あるがごとくなり」と詠(うた)われましたが、これは念仏の心を持った人は、かぐわしい香気をそなえた人のようである、ということ。お念仏もよい香りのように、人から人へと伝わっていくのですね。
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