実現できなくても努力する美しさ【釈尊のことば】
実現できなくても努力する美しさ【釈尊のことば】
(本願寺新報 2015年(平成27年)9月1日(火)号より)
なんだかこの言葉、ドキリとしませんか?うわべだけの言葉や付き合いが2500年も前のインドの人びとも自覚していたのか…と、深く考えさせられる言葉ですね。仏教には、在家の仏教信者が守るべき基本的な五つの戒律がありますが、「不殺生戒」と並び、「不妄語戒」つまり「嘘をついてはならない」という戒めが入っているのです。「妄語」には、嘘をつかないという狭い意味だけではなく、この句のように実行を伴わないうわべだけの言葉をも意味しています。
自分をよく見せようと都合の良いことを言った経験は、誰しも一度や二度は思い当たるのではないでしょうか。そして、言ったものの実行できずに悩むこともしばしばですね。釈尊は人間の内面を深く観察し、自己をとことん探求されました。この一文に示される「言うだけで実行しない人」とは、決して誰かを非難するための言葉ではなく、私たち一人ひとりに自省を促す言葉だと受け取るべきでしょう。
さて、親鸞聖人も釈尊と同じように深く自己を見つめておられました。そして煩悩にとらわれ、我執から逃れられない愚かな身である自身を「凡夫」と言い表されたのです。私たちは、ともすると自己中心的な考えに陥り、知らぬうちに言葉や行動で他人を傷つけてしまうことがあります。しかし「凡夫だから仕方ない」というのは親鸞聖人の姿勢ではありませんでした。言ったとおりに、あるいは自分に誓ったことを実現できなくとも、それに向かって努力する姿こそ、葛藤する人間の美しさと言えましょう。
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