「家族葬のパイオニアが見通す葬儀の近未来」│株式会社オフィスシオン会長 寺尾俊一さんインタビュー<前編>
近年は葬儀が小規模化し、家族葬も珍しくなくなりました。その流れをいち早く予見し、日本初の家族葬専門会社を立ち上げた寺尾俊一(てらお・しゅんいち)さん。その先見の明で見通す葬儀の未来はどのような光景なのでしょうか?寺尾さんの事業戦略や宗教観を交えながらお話をうかがいました。
寺尾 俊一さん(写真提供:寺尾さん)
これからは、葬儀がプライベートなものになる?
――オフィスシオンの事業を始めたきっかけや、特色などを教えていただけますか。
寺尾 俊一さん(以下:寺尾):1995年頃、名古屋で葬儀の小規模化を考えるプライベートフューネラル研究会というものに関わっておりました。その頃は大規模な葬儀が主流でしたが、人口動態を考えると間違いなく葬儀は小規模化していくという見通しで開催されていた研究会です。
他の葬儀社さんからは、葬儀が小規模化するわけがないだろうと、相手にされていませんでした。バブル期に葬儀の規模が大きくなりましたが、バブル崩壊後も会社の慶弔規定の名残で、規模の大きな葬儀が続いていました。出席する役職、香典、お花などについての規定が社内で定められていたため、会葬者の規模も大きかったのです。葬儀におよそ300万円の用意が必要だった時代です。自宅ではスペースが足りないため、会葬者のために葬儀会館も増え始めました。
葬儀会館はあくまでも接待・交際・おもてなしの施設であって、宗教的満足が得られにくいことが課題ですが、ニーズにはフィットしていたのだと思います。のちに会葬者増のバブルがはじけたときに、これからは葬儀がプライベート化していくはずだと予感しました。
――葬儀の小規模化を早くから予見されていたのですね。
寺尾:はい。そのような葬儀が変化していく時期に、私は葬儀専門の人材派遣業を経営していました。家族葬が出てきたとき、葬儀社の大半は手間だけかかって儲からない、つまらない仕事だと認識していました。亡くなった人と懇意にしていた人だけで過ごしたい、というニーズがたしかにあったのですが、マニュアルを外れた仕事はしたくない、要望が細かいとやっていられない、というのがその頃の葬儀社の本音でした。
そこで私どもは、小規模な葬儀を請け負い、ご遺族の要望に応えるということを考えるようになりました。それまでは他の葬儀社さんから仕事をいただいていたので、直接小規模な葬儀を引き受けてよいものかと悩んでいましたが、葬儀社さんは小さな仕事に興味がないので邪魔することもないだろうと判断し、日本初の家族葬専門の会社を立ち上げました。
弊社の特徴はスタッフがすべて女性だという点です。最愛の家族を亡くして悲しみにくれているときには特に共感が大事です。そのため女性の感性や共感力を大切にしていました。
また、2005年頃当時は、インターネットのみで宣伝広告を行ったことも珍しかったようです。これについては、ホームページから葬儀を申し込む人がいるわけがない、と他社に笑われました。しかし実際には自宅にブロードバンドやPCを持つ方々からの申し込みが急増しました。それを発端としてネットを通じた家族葬の申し込みが増えていきました。