目指すは、会話がはずむ賑やかな霊園|上野國光さん(日本石材産業協会副会長兼・㈱イオ代表取締役社長)インタビュー<後編>
――これからの石材業界はどうなるのでしょうか?
上野:正直、この先どうなるかわかりません。協会では10年後の夢のある世界について話し合っています。それと同時に、10年後の最悪のストーリーもイメージしています。前者にもっていくにはどうすればよいか、知恵を出し合っているところです。後者は、供養に対する消費者の思いがなくなり、お墓もいらない、となってしまう未来です。一方で前者は少子化も落ち着き、お墓の需要も増えていく未来です。
子どもたちに、手を合わせる尊さを
――お墓参りや、手を合わせる行為を広めていくには、どうすれば良いと思われますか?
上野:中国で大地震があったとき、日本の救助隊が駆けつけて、亡くなった方の前で敬礼をし、中国の人たちが感動したと聞きました。このように死者への敬意は自然と出てくるものです。しかし、最近は手を合わせる場所・機会そのものが失われつつあります。
お寺の本堂に行って手を合わせる。そういう行為を教えてほしいと思います。いまの幼い子どもが手を合わせているのかな、両親や祖父母がそのことを教えているのかな、ということが心配です。ペットの金魚が死んだとき、土に埋めるのではなく、流し台から流しなさい、とう親がいるそうです。死者への敬意がなくなってくるのではないでしょうか。
本来、人が持っているプリミティブなものを子ども達に教えていく楽しいプログラムが必要でしょうね。これを私どもは「墓育(はかいく)」と呼んでいます。子どもたち自身のアイデアで、時代に合った新しいお墓を考えてもらう企画も面白いかもしれません。そのような企画や啓発を宗教者の方々とご一緒できたら嬉しく思います。
――今後の展望をお聞かせください。
上野:時代に合わせて変わっていかなければいけませんが、同時に守っていかなければいけないものもあります。手を合わせる心や、質の高い墓石を加工する伝統技術は後世に伝えていきたいと思いますし、変えていいものと変えてはいけないものをしっかりと見定めていきたいと思います。
――本日はありがとうございました。
上野國光(うえの・くにみつ)さんプロフィール
日本石材産業協会副会長、㈱イオ代表取締役社長
1956年生まれ。大学を卒業後、電機メーカー勤務などを経て、88年にイオ株式会社を設立、石のギャラリーを中心とした業務を展開する。東京都内を中心に大規模墓地や納骨堂の開発、寺院の活性化のプログラム(寺報発行サポート、墓地管理業務)などの事業に携わっている。