★PICK UP 【1月4日は石の日】お墓は本当にいらない?お墓がないことによって失うもの、得られるもの│有限会社川本商店インタビュー<前編>
お墓は本当にいらない?お墓がないことによって失うもの、得られるもの
有限会社川本商店インタビュー<前編>
「おひとりさま」が増え、お墓の継承者が減っていく時代。
墓じまいや改葬(お墓の移転)を考える方も少なくありません。
また、樹木葬や海洋散骨など、あらたな選択肢も増えつつあります。
あふれる情報の中で、いったい何を選べば良いのでしょうか?
墓装用品の老舗メーカーとして、日本の“骨文化”を育んでこられた「有限会社川本商店」の川本恭央さんと雅由さんにお話をうかがいました。
プロフィール
昭和40年12月1日生まれ 55歳
日本大学法学部卒業
一般社団法人日本尊骨士協会 代表理事・一般社団法人日本石材産業協会 常任理事
全日本宗教用具協同組合 理事・一般社団法人終活カウンセラー協会 理事
尊骨士・お墓ディレクター2級・仏事コーディネータ―・終活カウンセラー上級・看取り士・保護司
平成5年9月19日生まれ 27歳
玉川大学工学部卒業
一般社団法人日本尊骨士協会 理事・おくりびとアカデミー認定 納棺士
無縁社会をもういちど有縁社会に
ーーまず、川本商店さんの自己紹介をお願いします。
川本雅由さん(以下、雅由さん):弊社は、墓装用品の老舗メーカーとして、花立、墓参用の手桶、香炉皿、燭台、塔婆立てなどを製造・販売しており、お墓に関わる総合企業を目指しています。
また、2016年に一般社団法人「日本尊骨士協会」を設立し、ご遺骨の力をお借りして目の前にいる方の心を傾聴し、自らを啓発しています。最近はご遺骨の行き場がなくなってきており、粉骨や散骨が必要とされる時代になりました。それを否定するのではなく、現在の日本人の骨文化と捉え、業界人として日々、勉強をさせていただいています。
ご遺骨を尊ぶことによって、無縁社会から日本本来の姿である有縁社会に再興していければと考えています。
墓装用品の数々
川本恭央さん(以下、恭央さん):弊社の「みんてら事業部」では、墓地の許認可、永代供養墓、納骨堂のデザイン設計を行なっております。お寺が、お墓を機縁としたコミュニティをつくることで、教えも伝わりやすくなります。
以前、永代供養墓の建立式で、区画を購入された方が、「永代供養墓を申し込んで安心したが、自分が亡くなったときに誰がここまで運んでくれるのか、心配が残る」と不安を漏らされたことがありました。おひとりで住んでおられるこの方が求めているのは、お墓というハードだけではなく、安心というソフトなんだと認識しました。
今、おひとりさまが増えています。親族以外が家族のように最期を看取ること、他人が喪主になるという選択肢があることが大切であり、お寺が墓地をご縁としてゆるやかな共同体、コミュニティをつくっていくことが求められています。お寺を中心に供養産業として死後のお手伝いをすることに大きな可能性を感じます。
お寺がおひとりさまにとっての「身内」になることができれば、地域に安心を提供することにもなるのではないでしょうか。
台東区 成就院(みんてらで設計)
情報誌「みんてら」
お墓は自分のためにある?「しがらみ」が与えてくれる力。
ーーお墓に関する状況は大きく変化しているようですね。現代において、お墓はなぜ必要なのでしょうか?
雅由さん:まずは埋葬という意味があります。日本の火葬文化においては、お骨を収めることが必要です。また、私個人としては先祖供養のためというよりは、自分のためや、生きている誰かのためにお墓参りに行きます。
それは自分と向き合う大切な時間になります。自分ひとりで内省するのは難しいのですが、お墓という場の力を借りることで可能になると思うので、お墓は存在意義があると思います。
恭央さん:お墓の形は時代によって変化してきましたが、お墓は生きている自分にとって必要なものだと思っています。ひとつには死を受容する場所です。「リメンバー・ミー」というディズニー映画で、人は亡くなってからも役割がある、ゼロにはならないと表現されています。故人は死んでも役割がある、お墓があることで故人は思い出してもらえる、お墓は役割を与えてくれる場所だと思うのです。
もうひとつ、昨今はお墓は「しがらみ」の象徴として敬遠されることもあります。たしかに、お墓の花が枯れていると隣近所から白い目で見られたりと、しがらみを感じることもあるでしょう。でも、そのしがらみのおかげで少しでも正しい人間になろうとするのではないでしょうか。私は弱い人間です、しがらみがないと欲望のままに過ごしてしまいます。お墓や先祖は、自分がちゃんと歩いていく道しるべ。先祖に見守られていることで、正しく生きようと思う人になれる気がします。
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