簡素化する葬儀 ゆるぎない仏教の価値|株式会社寺院デザイン代表取締役 薄井秀夫さんインタビュー<後編>

 

「葬式仏教価値向上委員会」と「日本弔い委任協会」?

 

(画像:写真AC)

 
――御社が運営に関わる「葬式仏教価値向上委員会」について教えてください。
 
薄井:「葬式仏教価値向上委員会」においては、葬儀に関する定期的な勉強会や報告を行っています。近年「葬式仏教」という言葉が使われるときには仏教に対する批判的なニュアンスが含まれていますが、私としては、葬式仏教はそんなに悪いものですか、ということをみなさんに問いかけたかったのです。死の不安や、大切な方を亡くした悲しみに対して、心の安寧を与えることにはゆるぎない価値があると考えます。
 
メディアなどの外部から批判されるならまだしも、仏教界内部で批判するのは違うのではないかと思います。日本に仏教が広まったのは、葬式仏教が広まったから、という側面もあると思います。特に浄土真宗はあの世のしあわせを約束している宗教だと私は思います。多くの方が僧侶に一番期待しているのは葬儀なのです。お寺や僧侶はそのことに、もっと誇りをもっていただきたいと思います。
 
――御社が運営に関わる「日本弔い委任協会」について教えてください。
 
薄井:「弔い委任」とは、葬儀や納骨、その他死亡届の提出など、本来なら家族が行うことを、お寺に任せていただく仕組みです。近年、いわゆる「おひとりさま」世帯が増えています。葬儀や納骨が満足いくようになされないのではないかと不安を感じておられます。その部分をお寺がサポートできないかと考えたことがきっかけで発足しました。この「弔い委任」に関するセミナーを開催したところ、お寺さんから大きな反響がありました。
 
檀家さんの中でおひとりさまが増え、相談されるケースが増えているそうです。これから先は単身世帯が増え、「弔い委任」がお寺にとって必須になる時代がくるかもしれません。成年後見など、手続きが煩雑な部分やお寺だけでは抱えきれない部分もありますので、専門家と連携していく体制をつくることが有効だと思います。もちろん住職の理解、檀家さんへの説明、専門家との連携は簡単ではありません。お金にならないという前提で始めていただいた方が良いかもしれません。
 
すぐにお寺の新しい収益源にするのは難しいかもしれませんが、既存の檀家さんがお寺から流出する防御策にはなると思います。現状、僧侶は死の専門家だという認識を持つ方は少なくないと思いますが、実際に死に関する相談に行くという方はほとんどいらっしゃらないと思います。この弔い委任の仕組みによって、死について相談する機会をつくることができれば、僧侶にとってもやりがいがあるのではないでしょうか。だれにも弔ってもらえないかもしれないと不安を抱えている方は多いですから、とても感謝されるはずです。
 
――今後の展望を教えてください。
 
薄井:葬送に関することを、基本に立ち返ってしっかりやることが大事だと考えています。それによって仏教界がV字回復することはないかもしれませんが、低落傾向のカーブをゆるやかにできるのではないかと考えています。ただ、仏教界の活動や経済規模が小さくなったとしても、それは必ずしも悪いことではないと思います。お寺は経済発展を求めるものではないと思いますので。お寺は社会に対して、いろんなものが縮小していくなかでも幸せになれる、というメッセージを発することができると思います。いわば「滅びの美学」、のようなものでしょうか。
 
日本社会も小さくなっていますが、決して不幸なことではないということを仏教界から主張して、新しい価値を提示していくこともよいのではないかと思います。お寺を通じてそのような発信のお手伝いができれば幸いです。
 
――本日はありがとうございました。
 

(画像提供:仏教タイムス)

  

薄井秀夫さんプロフィール

 

薄井秀夫さん

 

代表取締役 薄井秀夫(うすい・ひでお)さん
昭和41年、群馬県生まれ。東北大学文学部卒業(宗教学専攻)
中外日報社、鎌倉新書を経て、平成19年に株式会社寺院デザインを設立。
著書に『葬祭業界で働く』『10年後のお寺をデザインする』『人の集まるお寺のつくり方』『寺院墓地と永代供養墓をどう運営するか』『どこが違うのお仏壇』など。
   

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掲載日: 2022.03.15