お寺離れの時代に、全国1500カ寺と人々をつなぐ|平岡 学さん(株式会社ナーム代表取締役社長)インタビュー<前編>
都市部を中心に、お寺とのご縁が薄くなり、僧侶も身近な存在ではなくなっているようです。そのような中、葬儀・仏事などお寺に関する無料相談所を通じて、お寺と人々をつなぐサポートを行う企業があります。なぜいまお寺に着目したのでしょうか?株式会社ナーム代表取締役社長の平岡学さんにお話をうかがいました。
PTA活動の中で痛感した宗教の必要性
勉強会の様子 提供:株式会社ナーム
ーーはじめに、事業を始めた経緯を教えてください。
平岡:私は東京のある地域のPTA会長を務めていました。浄土宗のお寺の土地を借りた小学校だったため、お寺のお盆祭の際にはPTAとしてお手伝いに行くこともありました。お寺がとても多いエリアでしたし、私個人としてはお寺さんに親しみを感じていました。ところが都市部ですから宗教との馴染みが薄い住人も多く、家の隣にお寺があっても宗派もわからない、四十九日の意味やお盆の意味もわからない、というような方がほとんどでした。
さらに、学校では宗教を排除し、給食の時間に手を合わせて「いただきます」もしないそうです。お寺や宗教と馴染みが薄い地域だったんですね。あるとき、近所の知人のマンションで孤独死をした方がいました。そのとき、住民の方がおっしゃった「気持ち悪い」という言葉に衝撃を受けました。「かわいそうに。」「もっと早く気づいてあげられたら」等の言葉があってもよいのではないかと違和感を感じました。
親も子もエリートが多い地域なのに、人として欠けているものがあるのではないか、人の尊厳が薄れていっているのではないかと痛感したのです。本来、人は一人では生きていけないはずなのに、競争社会の中でつながりが薄れていったのかもしれません。つながりを見直し、人の尊厳を取り戻すために、いまこそ宗教が必要ではないか、と考えるようになりました。
ーーそのような原体験があったのですね。お寺を紹介する事業を思いついたきっかけはあるのでしょうか?
平岡:前職では葬儀社にお寺を紹介する会社に勤めていました。そこで葬儀社と僧侶の間で行われていた高額なバックマージンに疑問を感じました。このことをどれほどお客さんは知っているのだろうか、この手数料が無くなればもっと低額で葬儀ができるのではないか、と思ったのです。
また、失礼ながら僧侶の質にも問題があるように感じました。僧籍だけを取得して、葬儀内容や遺族へのケアよりも経済的なことに関心が高い僧侶も少なくありませんでした。身入りの少ない法要は請け負わず、葬儀しか行わない僧侶もいます。意識が低い僧侶に対しては、依頼者も厳しい目で見ていますし、大切な仏縁がつながっていかないのはもったいないと危機感を感じました。それならば、お寺を紹介する事業を立ち上げようと思い立ったのです。