地域へ、離島へ、都市へ!「縁起でもない話」から広がる可能性とは?

地域へ、離島へ、都市へ!
「縁起でもない話」から広がる可能性とは?

 
老い、病気、死といった、一般的には「縁起でもない」と忌避されがちな話題をあえて語り合う。そんな「縁起でもない話をしよう会」について、鹿児島県妙行寺の井上 從昭(いのうえ よりあき)住職からお話をうかがっています。前編記事では、「縁起でもない話をしよう会」を立ち上げられたきっかけや、それを通して得られた気づきについてお話しいただきました。
 
インタビュー後編では、「縁起でもない話」をきっかけとして広がるご縁や、今後の展望といった可能性についてお話をうかがいます。
 
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縁起でもない話をしませんか?地域と繋がる、井上 從昭住職の取り組み
 
縁起でもない話から生まれる見守り
 

妙行寺さんと葬儀社さんの共催で行われている「終活フェア」の様子。終活に関心のある方と、寺院や終活の専門家が繋がるイベントとして好評を博している。

 
ーー「縁起でもない話をしよう会」を通して、支援や相談を展開する可能性はあるのでしょうか?
 
井上 從昭さん(以下:井上):可能性は充分ありますし、実行するべきだと思っています。前編でお話しした、「縁起でもない話をしよう会」の前段階として行ったシンポジウムのテーマは「地域での見守り」でしたね。そこでは、ドクターと看護師さん、介護施設の施設長さんといった方々に来ていただきましたが、これには来られた高齢者の方々とスタッフの方々が顔見知りになっていただく場としての側面もありました。来てくださった方々に「困った時はこの人たちに相談できるから安心してね」と教えたかったんです。
 
介護保険を充分に活用できない人もいらっしゃいますよね。その中にはあまり外に出ることができない方もおられますが、よくお寺に来るおばあちゃん達はそうした方々の事情を知っています。彼女達にサポーターになってもらって、「あそこのおじいちゃんおばあちゃんがちょっと困ってるよ」といった情報を間接的に得られれば、支援もできますよね。そうした繋がりで、地域のセーフティネットが構築できたらと、ずっと構想しています。
 
ーーいわゆる「月参り」でも見守りができるのではないでしょうか?
 
井上:私の所属寺はご門徒の方がお参りに来られることが主で、我々がお参りへ行くことはほとんど無いんです。これは鹿児島の地域性かもしれませんね。
なので、月参りと言ったお参りを活かして、おじいちゃんやおばあちゃんの見守りができない代わりに、情報が集まる場を作ってしまえばいいのでは、と考えました。例えば理学療法士さんに来てもらって健康講座サロンを開いて、集まったご縁を通して地域の情報を収集できればと思っています。
 
お寺であれば行きやすいという人が必ずいらっしゃいます。あるいは、お寺が行きやすい場所ではなくても、必ず他に居場所を持っておられるはずなので、無理して行きづらい場所に来ていただくよりも、それぞれの居場所同士が繋がっていれば良いのではと思うんです。
例えば、訪問看護ステーションとお寺がつながっていれば、情報共有ができますよね。個人情報の問題がありますが、まだまだ可能性も残されているのではないかと思います。
 
ーーお寺を高齢者が集う場としてデザインできれば、連携も取りやすくなりますね。
 
井上:そうですね。お寺の空間を場にするというのは大事なことだと思います。ただ、寺院単体で場を作るのは難しいかもしれません。やはり、色々なお手伝いいただけるサポートしていただける方がいらっしゃって成り立つのではないかと思います。
 
ーーさまざまな繋がりがあって、ということでしょうか?
 
井上:そうですね。「縁起でもない話をしよう会」でも、ファシリテーター、話題提供、記録係や機材といった役はすべてスタッフの方がやってくださっています。
 
ーーでは、井上住職は会の中でどういったお立場なのでしょうか?
 
井上:私は毎回「家主」と名乗っています。
 
ーー「家主」ですか?
 
井上:はい。代表でもありませんし、冒頭の挨拶もまぁしなくていいか……と(笑)。ですが、場を提供している身ではあるので「家主」と名乗っています。
司会進行の上では自分の役割は特にありませんので、大体は駐車場係をしていたことが多かったです。駐車場係って、大事なんですよね。迷っている方にご案内できますし、何より「ようこそ」って最初に挨拶する立場ですから。
 
ーーまさに、ご縁で成り立っているイベントと言えますね。また井上住職のお人柄が垣間見えます。こうしたイベントを通して、お寺とのご縁が結ばれる参加者もおられるのでしょうか?
 
井上:ご縁が結ばれるケースで、もっとも多いのは話題提供者といったスタッフです。イベントがご縁となって、鹿児島に引っ越してきたスタッフが所属寺の門徒になられることを希望されることもありますよ。
 
ーーそれはなぜだと思われますか?
 
井上:参加者との接点は当日だけの場合がほとんどですが、話題提供者は日頃から私達と接点がありますよね。今回の「縁起でもない話」だけではなくて、終活のセミナーや他の色んな活動で、私たちと接点があります。そうするとお寺ということに対してのイメージは明らかに変わりますよね。
 
ーーどういった変化が起こるのでしょうか?
 
井上:もともと、お寺は法事がないと行けない場所、気楽に入る場所ではないんじゃないかと思っていた方が、お寺での打ち合わせを通して、実は入りやすい場所だとイメージされると同時に、学びや人との出会いもある場所なんだと気づかれていかれますね。
 
ーーお寺がこうした取り組みを行う意義は何だと思われますか?
 
井上:お寺はみ教えを伝える場であることはもちろんですが、お寺は公益法人でもあると思うんです。
「公益」の定義は多様な考えがあると思いますが、私は地域に住む人達にとって安心を与えるのが役割ではないかと思うんです。例えば、一人暮らしのおばあちゃんに「困ったときはドクターや介護の方もいるからね」と支えられれば、不安から解放されますよね。つまり、「ひとが出会って人と繋がっていく場所」を作ることで、地域の方に安心を与えるのが、お寺の役割として大切ではないかと。
そして、場作りの活動を通して、これまでご縁のなかった方がたが、新たにお寺と関わることで、お念仏のみ教えへと繋がりますよね。集まりの中で死生観を話すと必ず「お浄土があってよかったね」という話になります。お寺でこうしたイベントをやる意義はそこにあるんじゃないかと思っています。
 

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掲載日: 2021.02.10