認知症と親子関係。支援を通して気づくこと|お寺で知る終活講座第2回レポート
「こうしてあげればよかったと後悔することばかり」親子で向き合う大切さ
長年、認知症患者と向き合い続けてきた増本先生。ですが、ご実母のことは「出産や育児を通し、母にはたくさん世話になったにも拘らず(介護は)放ったらかしにしていた」そうです。幼少の頃から物の考えや価値観が異なり、学業や結婚のことなど母親と対立することばかりだったそうです。親子であっても理解できず、歩み寄ることもできず、双方がしんどかったといいます。それでも、増本先生はご実母が認知症を患った時、勤めていた病院を退職し、一緒に暮らそうと考えていたようです。
しかし、その直後にご実母は入院を余儀なくされ、そのまま亡くなってしまいました。元気になって帰ってくると思われていたそうです。「あの時、こうしてあげればよかったと後悔することばかり」と振り返る増本先生。親が元気なうちから、親孝行や親子で向き合う大切さを話されました。
「明日親が元気かどうかは分からない」とおっしゃる増本先生のお話は、非常に説得力がありました。
年齢を重ねるとともに、足腰は弱り、髪の毛はだんだん白くなっていきます。そうした変化は一般的に「衰え」というネガティブなイメージとして捉えられがちですが、増本先生はそれを「新しい変化」として受け止めることが、心豊かに生きるヒントではないかと話されました。
「20歳を超えるとどんどん認知機能は落ちていく、つまり私たちはいろんな形で常に変化を続けている」と語る増本先生。認知症への大切な備えとして、早い段階(若い頃)からそれを自覚し、良きにつけ、悪しきにつけ、先ず変化を受け入れる習慣(考え方)を持つこと、物事に対する視点を柔軟に変えること、自分自身を変える力を養うことを勧められました。
「終活とは、単に死を考えることではない」と話される増本先生。残された人生の中で、「死があって生がある」ことを前提に、親子関係のありかたを見つめ直したり、今後自分はどのように歳を重ね、そしてどのような終末を望むのか……人生をいかに自分らしく生きるのか?それを考えることが大切なのかもしれません。
質疑応答の記録
その後用意された質疑応答の時間では、会場からは「認知症とボケの違い」や「認知症は、自分が気づいたときにはもう遅いのか?」、「胃ろうや中心静脈の医療も家族にとっては延命行為だと思うが、先生はどう思うか?」といった質問がありました。
また、オンラインからは「自分自身で終末期の意思決定をすることについて大事なことや考慮すべきことがあれば先生のお考えをお聞きしたい」、「衰える中で前向きに暮らすことは非常に難しく感じる。こういったなかで、どうしたら前向きになれるのか?」といった質問があり、その他にも参加者のリアルな悩みが多数寄せられました。