元気なうちに親子で話し合うべきこと|お寺で知る終活講座第3回レポート

 

質疑応答の記録

 

 

Q.認知症の準備のため、任意後見契約が有効で、これには公正証書が必要とのお話でしたが、作成には立会人(=証人)が必要なのでしょうか?

 
A.公正証書の作成には判断能力が必要です。判断能力のある当事者が行けばいいので、立会人(=証人)は必要ありません。
 

Q.その際戸籍謄本などに記載されるのでしょうか?

 
A.いいえ、この契約は法務局で内容が登記、管理されますが、戸籍には一切反映されません。
 

Q.私が不動産などを売却する際、認知症はどう関わってきますか?

 
A.判断能力に問題が無ければ、ご自身の意思で売ることができます。逆に認知症などで判断能力に問題があれば売却できません。判断能力の確認は司法書士などが行います。
 

Q.夫が亡くなって、夫婦で持っていた持ち家の名義を妻が自分のものに変更するために法務局に行った。すると兄弟の印鑑が必要であると言われました。これはどういうことなのでしょうか?

 
A.お子さんがいない場合に限り、故人の財産は故人の配偶者と故人の両親が相続人になります。不動産の名義を配偶者の名義に変更するには、ご両親の承諾が必要となり、その承諾を証明する書類として遺産分割協議書に配偶者とご両親のご署名・実印押印と印鑑証明添付が必要です。また、このご両親がすでに亡くなっていた場合、故人のご兄弟姉妹が相続人となります。この場合も同様に、そのご兄弟姉妹全員の遺産分割協議書へのご署名・実印押印と印鑑証明添付が必要です。
 
このような場合は、トラブルになる確率が高くなります。これを避けるためには遺言書を作成しておくことが有効になります。
 
また、2024年から、亡くなった方名義の財産をそのままにしておくと過料(10万円以下)が科されるようになります。故人名義の不動産がある方は今のうちに名義を変更し、手続きをしておくという動きが盛んになってきています。
 

Q.夫婦が80代で、娘が50代です。相続は娘ひとりなのでトラブルは無いだろうと思って鷹揚に構えていましたが、もししておいた方が良いことがあれば教えてください。

 
A.ご夫婦のどちらかが亡くなられた際の財産の分配などを話し合われて、それを明文化して遺言書を作成しておくことをおすすめします。たとえば銀行口座、ご主人が亡くなられた際に遺言書がなければ、遺産分割協議書を作成し、奥さんと娘さんが署名し、実印を押して、印鑑証明をつけて銀行に提出することではじめてご主人の銀行口座を解約することができます。分配の割合などで、娘さんがそれを拒んだ場合、手続きは進みません。
 
そうなると老後資金などに支障が出ることもあるでしょう。そうした事態に備えて、ご夫婦が相互に財産を相続する旨の遺言書を作成しておくことをおすすめします。娘さんには遺留分という最低限遺さなければならない権利があるので、遺言書作成は専門家へご相談ください。
 

Q.自筆証書遺言の作成には指定の用紙が必要なのでしょうか。

 
A.いえ、普通の紙でかまいません。ただし、書き方にはしっかりとした様式がありますので、これを間違えると無効になる場合があります。自筆の遺言書は家庭裁判所に提出し、検認してもらう必要があります(法務局での保管制度を利用している場合は別)。
 

Q.遺言書は毎年書き換えた方が良いのでしょうか?

 
A.考えや状況が変わったときに書き換えれば十分です。
 

Q.毎年親から贈与税がかからない限度額を私名義の銀行口座に移してもらっています。その際に気をつけることはありますか?

 
A.通帳から通帳へお金を移す場合、贈与、貸与、預かり金の三種類の解釈があります。必ずしも贈与とは限りません。贈与は、双方が合意して、相手の口座にお金を移して、かつそのお金を相手がいつでも使える状態の場合に成立します。
 
たとえば、100万円ずつ相手名義の口座に移しても、その口座を自分の手元で管理していた場合、贈与は成立しません。贈与した相手がその贈与した金銭をつかえる状態にあり、かつ贈与した証明として贈与証書を毎年作成しておくなどの対応が有効です。節税対策をされる際は必ず税理士などの意見を聞くようにしてください。
 

Q.2000万円までは贈与税が発生しないと聞いたんですが……。

 
A.原則で言えば、対象が誰であろうが一年間に非課税で贈与できるのは110万円までです。ただし、お孫さんの教育費などを、信託口座を使って援助していくといった例外や、相続時精算課税といった制度が別にあります。
 
相続時精算課税は事前に届け出て贈与しておいたときに、それに対して、その時点では課税されないという制度です。たとえば、生前に1000万贈与をされますと、多額の贈与税がかかります。ただし、これをこの制度を使って事前に届け出ておけば、亡くなったときに相続分に合算して相続税を納めることになります。
 
相続税よりも贈与税のほうが大きいですし、また相続税には基礎控除額(3000万円+600万円×法定相続人の数)がありますから、活用されることをおすすめします。具体的に行動を起こされる際には税務署もしくは税理士にご相談下さい。
 

Q.夫婦でお互いに任意後見契約を結ぶことはできるのでしょうか?

 
A.可能ですが、ご夫婦の場合年齢が近い場合が多く、認知症になられるのもほぼ同時期であることが多いので、実際有効的に働くかどうかは疑問です。おそらく公証人によっては別の方を勧める場合もあります。基本はお子さんや、甥姪など、ひと世代以上下の方と結ばれるのが現実的でしょう。
 

Q.金銭が絡む相続の話は子どもから話しづらくなります。どのように会話のきっかけをつかめば良いでしょうか?

 
A.亡くなるまでの介護の話や、亡くなった後の話で、親子の間で乖離があるのはお金の話です。子どもは親にそうしたことを話しづらいですし、親も子どもにそうしたことは話したがりませんが、しておかなければ非常に困ることです。
 
親は子どもに対して、全てを開示する必要はありませんが、それでも一定範囲までは開示してあげてください。お子さんの側も、介護計画を含めてそうした計画を一緒に考えよう、と言う必要があるでしょう。書店でマネープランの項目があるエンディングノートを購入し、一緒に作成することをおすすめします。また、今日のようなセミナーに親子で一緒に参加し、きっかけにされるといいでしょう。
 

Q.親を見ていると、老後のマネープランがあるように見えません。心配ですが、特に働きかけることもできません。子ども側としてなにかできることはあるでしょうか?

 
A.ご両親の財産状況がわからず、年金だけといった状況になった場合厳しくなるでしょう。ご両親の要介護度が上がった場合、ご自宅での生活にはおそらく限界が来ます。そうした場合、お子さんと同居されるか施設に入られることになるでしょう。
 
施設に入る場合は介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、特別養護老人ホームなどがあります。おそらく年金だけで入れるのは特別養護老人ホームですが、これは大変な順番待ちです。となると今度はサービス付き高齢者向け住宅に、不足分を子どもが負担されて入ってもらう、ということになるでしょう。ご両親の年金と、ご自身の負担できる金額で入れる施設を探しておくことが必要でしょう。
 

Q.独身で子どももいないのですが、いま信託銀行からこうした「老後の備え」として、今日お話をいただいたようなことを世話してくれる、といった事を勧められています。こうしたところと契約した方が良いのか、それともまだ元気なので自分なりに「終活」を進めた方が良いのかを迷っています。

 
A.ストレートに申し上げると、すぐに今日お話ししたような種々の手続きや準備をすぐするべきです。いま私どもの事務所にも50代の未婚の方が、いつ倒れても良いようにということでいらしています。おひとりの方はしなければいけないことがたくさんあります。入院の保障などの生きているときのサポート。これは信託銀行では制度上できません。信託銀行にできることはお金の準備と遺言書です。それ以外のサポートは難しいところがあります。
 
それ以外の手厚いところまでサポートしてくれる信託銀行は、たいてい私どものような事務所を紹介する形式をとっています。ですので、そうした部分がしっかりしているかどうかを見極められる必要もあると思います。
もし弁護士や司法書士などの専門家に依頼する場合は個人ではなく法人でされている事務所などにしておくと、期間が長くなっても安心できます。
 

Q.任意後見契約の公正証書は書類を取り寄せるなどして、自分で作成することができるのでしょうか?

 
A.代表的な方法はやはり、弁護士事務所、司法書士事務所、行政書士事務所などのお知り合いの専門家に相談されることです。ただし10万円程度の費用もかかります。
無料で作成する場合はインターネットなどで任意後見契約に関する書類のひな形を探し、それに基づいて原案を作成した後、公証役場に連絡して、公証人と相談し、添削してもらって作成する、ということもできます。
一度公証役場に相談に行かれるのが良いでしょう。

   

Author

 

他力本願ネット

人生100年時代の仏教ウェブメディア

「他力本願ネット」は浄土真宗本願寺派(西本願寺)が運営するウェブメティアです。 私たちの生活の悩みや関心と仏教の知恵の接点となり、豊かな生き方のヒントが見つかる場所を目指しています。

≫もっと詳しく

≫トップページへ

≫公式Facebook

掲載日: 2022.01.06

アーカイブ