お経の世界にダイブしよう。VRを活用した新たな試み|VR伝道ー島根県蓮敬寺

 

仮想が満たされると現実世界で会いたくなる?VRが秘める可能性

 

3Dモデルを製作中の様子(画像提供:冨金原さん)

 
ーーVRの中ではどんなご活動をされているのですか?
 
冨金原:はじめは、現実のサイバー南無南無の仲間達とVR空間の中で坊主バーを企画して、その中でお悩み相談を行いました。その後、8月にはVR空間で出会った人達と盆踊り、年末には除夜の鐘を行いました。
盆踊りや除夜の鐘は、実家に帰りたくても帰れない方や海外の方がVR空間に集まって来られました。いずれも疑似体験ではありますが、盆踊りや除夜の鐘の空気感は伝わったのではないかと思います。
 
ーーVRの空間にはどんな方々が来られるのでしょうか?
 
冨金原:新しい機械ということもあってか、20代~30代の若い世代の方々が中心に来られます。また、VRの利用者の中には、悩みを抱えていたり、居場所を求めてVR空間にやってきたという人もおられました。
 
――ということは、VRをきっかけに悩みの相談を受けることもある、ということでしょうか?
 
冨金原:そうですね。実際、僧侶として活動していて、悩み相談を受ける機会は現実世界よりも多く、その内容も大半は現実世界での悩みです。例えば、友人関係での悩みや、緊急事態宣言が出てしまって学校に行けないとか、インターネットだから特別違う悩みが寄せられるわけではなく、そこにはちゃんと生身の人間がいると感じます。
 
――VR空間でそうした会話はできるのでしょうか?
 
冨金原:むしろ、現実世界よりも会話がしやすいのかもしれません。VR空間の中では対面のように見えますが、厳密には対面ではないんですよね。アバターを介しているので素顔は見えず、フィルターを使って声を変えることもできるので、お互いの素性がわからず、素直に喋れるのだと思います。
対面では、僧侶と会話するのは少し遠慮がちになるかもしれませんが、VR空間は実質的には対面ではないので、僧侶ともより深いお話ができるのではないでしょうか。
また、SNSと違って録音しない限りは記録されない点も、相談しやすい環境につながっています。
 
――そんなVRが秘める可能性は何だと思いますか?
 
冨金原:新たなご縁作りでしょうか。VRはコミュニティ作りに長けているという特徴があります。株式会社ドワンゴが運営している「N高校」はご存知でしょうか。N高校とは、ネットを活用した通信制の高校らしいのですが、先日、N高校の授業の説明会に参加した生徒の母親とお話しをする機会がありました。
N高校は授業をネットで受けるか、対面で受けるかを選択できるそうですが、ネットでの授業を続けていくうちに、だんだん対面授業を選択する頻度が高まってくるそうなんです。つまり、仮想が満たされると現実世界で会いたいという欲求が出てくるらしいんです。
なるほどなと思いました。確かに、私たちもVRの中でだんだん仲良くなってくると、実際に会おうぜ!という流れになることがよくあります。
 
実際に、先日はVRで交流した方が滋賀県から島根県の当寺まで来てくださいました。滋賀県なので、当寺と同じ浄土真宗本願寺派のお寺があると思いますが「あなたのお寺にいってみたいんだ」と。VRでの新たなご縁作りの可能性を感じた瞬間でもありましたね。
 
その後、緊急事態宣言が解除されたら10人ぐらい集まって京都で「オフ会」(*2)という名の西本願寺参拝ツアーをやりたいと計画しました。VRの中で出会い、お寺に興味持ってくださった人たちと一緒に西本願寺を見て回りたいんですよね。
2022年1月の時点ではまだ実現していませんが、VRコミュニティの人と西本願寺へ参拝というのは、新たなお寺とのご縁になるのではと思います。
 

(*2)オフ会:ゲームやSNSなどのオンラインで知り合った人と、現実世界(オフライン)で会う行為のこと

 

「お経典にダイブ」?VRの可能性は他にもたくさん

   

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掲載日: 2022.01.24

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