お寺を飛び出し、地域の課題を見つめる。|「伊達未来会議」ー北海道紋鼈寺
世代や職業を超えて、共に地域を考える
ーーイベントにはどういった方が来られるのでしょうか?
奥田:SNSで呼びかけたところ、合計で30人くらい来られました。年齢層は20代〜50代がメインで、個人店主や大手保険会社社員、地域の学校の先生と幅広い職業の方が来られています。
ーーイベントの流れを教えて下さい。
奥田:第1回目は、伊達の統計データを見て、現在の街を取り巻く状況を確認しました。出生率や死亡率を見て、お互いがどういうふうに街を見ているかを共有しました。2回目は、具体的な問題を話し合い、3回目は新型コロナウイルス感染症の影響で、実際に集まることが困難になったので、オンラインに切り替え、感染症による街の停滞をどういうふうに乗り越えていくかを地域の人と考えました。参加人数こそ減りましたが、そのぶん濃いディスカッションをできましたし、配信を見てくださった方ともチャットを通して意見交換をすることができました。
ーーこれまでにどういった意見がありましたか?
奥田:先程お話ししたような、移動に関する問題や健康に関する問題が多かったですね。他には、教育に関する課題が印象に残っています。というのも、教育の問題について提言がなされ、理解こそできたものの私にはあまり刺さらなかったんです。
でも、それはそれで良くて、今回であれば教育の問題に刺さった人同士がつながり、その解決に向けて動いてもらえればと思います。あくまでも課題をブレインストーミングしていくことを重視しています。
もっと人が住みやすい街にするには?といった根本的な問題提起もありました。特に「住みやすさ」についてはお寺としても、私個人としてもなんとかしたいと思っている課題で、伊達の将来を語る上で欠かせないものだと感じましたね。
ーーお寺ではなく、ビアバーで行われたのはどうしてでしょうか?
奥田:たまたまビアバーのオーナーとご縁があったということもそうですが、お寺よりもそこで行うほうが良いと感じたからです。
一般的なイメージとして、お寺は仏事を行う場所であって、日常の課題解決を期待されている人は少ないのではないかと。であれば、日常から地域で利用されている場所を活用したほうが良いんじゃないかと。なので、この活動では僕がお寺を飛び出し、街に出るという選択をしました。
「言っても無駄」を「言って改善」に
(画像提供:奥田さん)
ーー僧侶がこうした場を主催する上で、意識されていることはありますか?
奥田:かつての僧侶像を目指しています。その昔、僧侶の助言で水田をつくったというお話を聞きました。お坊さんは色んな情報を持っていたので、ある意味で街の指導者でもあったことが分かります。
もちろん、現代で指導者を目指しているわけではありませんが、かつての僧侶のように、地域の人にとっての知恵袋になれれば良いですね。
また、結果よりもその過程を意識しています。やっぱり、街のために頑張っている姿を見て応援してくださるんですよね。門信徒でない方からも、紋鼈寺の住職は地域と積極的に関わっている、という言葉をいただきました。NHK北海道のローカル番組に出演させていただいたことも手伝い、最近はこの活動が少し有名になったと感じています。
結果が全てではなく、頑張っている姿を見せるだけでも応援していただけます。また、そうした活動の積み重ねが将来的なお寺への評価にもつながるかもしれません。
ーー3回の会議を経て、どういった気付きや学びがありましたか?
奥田:やっぱり、文句で終わらせなくてよかったと思いました。文句はただ言うだけなら「文句」に留まってしまいますが、それを地域で共有すれば「意見」として次の行動につながるきっかけになります。文句を意見という、未来への燃料に変えられないかなと。そう思ったときに、場が用意されていることが大事だと気付かせていただきました。
ーーイベントにおける課題、今後のご展望をお願いします。
奥田:スケールの大きな話ですが、今後の展望は、会議で出た課題や意見が実際の政策に反映されることですね。実際に改善につながれば「言っても無駄」が、「言えば改善につながる」というポジティブな気持ちになれますよね。伊達未来会議を通して、伊達市民がチームになればもっと活気が出てくるのではないかと思います。
一方、課題としては、その動きが生まれるまで活動できていないことですね。なので、今後はイベントで挙がった意見が実際に改善されたり具体化されたりする方向へと持っていくのが目標です。
ーーありがとうございました。
編集後記
今回は、紋鼈寺の住職である奥田さんに「伊達未来会議」について教えていただきました。
課題解決の第一歩として、それぞれの文句を「意見」として問題提起する場が必要で、その場は僧侶が主催するからといって、必ずしもお寺である必要はない、ということがこの活動のポイントではないでしょうか。
地域課題という大きな壁を乗り越えてゆくのは決して容易なことではありませんが、それでも向き合っていくことの大切さを気付かせていただきました。
奥田さん、ありがとうございました。