主役はイベント参加者?来た人の数だけふくらむお寺の夢―広島県浄泉寺
(写真提供:遊亀山さん)
広島県尾道市にある浄泉寺。ここにはたくさんの人びとが絶えず集まります。
浄泉寺の魅力はずばり「イベント」。イベントをしているお寺はたくさんありますが、浄泉寺ならではのスタイルがありました。
どのような工夫をされているのか、住職の遊亀山 真照(ゆきやま・しんしょう)さんにお尋ねしました。
――浄泉寺のある尾道市はどんなところですか?
遊亀山真照さん(以下:遊亀山):尾道市は港町で、昔から港に仕事を求めて来られる方が多いところです。人口が減り、高齢化も進む一方、ここ数年は若い方が移り住まれていますね。空き家に移住者が来られることもあります。
また、空き家への移住を推進する「空き家再生プロジェクト」もありますよ。人口が著しく増加したわけではありませんが、移住されてきた方たちが新しく文化を作って、新しい風を吹き込んでいるように思います。だからこそ、新たにこの地に来られた移住者との接点づくりがお寺としての今後の課題と言えますね。
――次に、遊亀山さんのことを教えてください。
遊亀山:私は4人きょうだいの末っ子で、上に姉が3人います。初めての男の子ということで、「お寺の後継ぎが産まれた!」と父は大喜びだったみたいですね。なので、小さい頃からお寺の行事には全て参加させられました。
それが嫌で、ずっとお寺から逃げたい気持ちはありながらも、どこか後ろ髪を引かれるような感覚も残っていました。とはいえ、大学を卒業してからは家にも帰らず電話もせず、父と全く話さない期間が2年くらいありましたね。
するとある日、父からカニが描かれた絵葉書が送られて来たんです。私を心配するメッセージの最後には「カニは横歩きだがまっすぐです」という言葉が添えられていました。私はその言葉を「横道に逸れてもそれがあなたの道だ」と受け取りました。その言葉をきっかけになんとなく気持ちが軽くなり、父とのわだかまりも薄れ、お寺に戻ることになりました。