カーボンフットプリントと私たちのライフスタイル|地球環境戦略研究機関インタビュー②<前編>

 

■カーボンフットプリントから考える暮らしのポイント

 
――こちらの『1.5℃ライフスタイル ― 脱炭素型の暮らしを実現する選択肢 ―』レポートでは、食・住・移動・余暇などにおける気候変動対策について言及されていますが、気候変動問題に対して、私たちが生活するうえでできること、気をつけるべきことはなんでしょうか?
 
杉原理恵さん(以下、杉原):いろいろありますが、たとえば食に関して言うと、「お肉をなるべく減らす」「旬産旬消かつ地産地消を意識する」「食べ過ぎず、残さず食べる」といったことが挙げられます。
 
小嶋公史さん(以下、小嶋):モノや、レジャーなどのコトの消費によるCO2排出量を表す考え方のひとつに、「カーボンフットプリント(炭素の足跡)」があります。モノであれば、原料となる資源の採掘から製造、輸送、利用、廃棄まで。コトであればその活動自体が生み出すCO2だけではなく、その活動を提供するために排出されるCO2の量まで含めて、ライフサイクルを通じて計算するものです。モノやエネルギーの消費、活動そのものが直接的に排出するCO2だけでなく、間接的なCO2排出も合算するところがポイントです。
 

家で冷蔵するまでに123.2gのCO2、リサイクルにはさらに12.1gのCO2を排出する

 
なぜお肉を減らす必要があるかというと、赤身肉、特に牛肉は、畜産の過程で大量の飼料や水を利用します。それらを運ぶエネルギーも消費されるので、突出してカーボンフットプリントが大きいのです。飼料となる穀物栽培や農地確保のために森林伐採なども行われているので、気候変動対策の観点では、過度な摂取を避け、さらにたんぱく質は豆類など植物性で補うようにすることが望ましいでしょう。
 
地産地消と旬産旬消については、旬産旬消、つまり温室栽培ではなく露地栽培(注:ハウスなどの施設を使わず、屋外の畑で栽培する方法)の野菜や果物であるか否かがカーボンフットプリント削減の観点では特に重要です。地元で露地栽培が難しいものを温室栽培するよりも、露地栽培のできる遠方から輸送・輸入したほうが、カーボンフットプリントが小さい場合も十分にあり得ます。
温室栽培でかかるエネルギーはとても膨大です。その上で、同じ露地栽培ならば地元産を選択する地産地消のほうが、よりカーボンフットプリントは小さくなります。
 
杉原:自然の恩恵をなるべく受けつつ、生産や輸送にかかるエネルギーを抑えて、ほどよく残さず食べる。地理的特性や季節、そしていのちを大事にすることは、カーボンフットプリントを減らすためのひとつのキーワードだと思います。
 

「できなかった」は個人の責任?

   

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掲載日: 2021.09.23

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