「地震」って何だ?地震大国の日本で暮らすということ【東日本大震災編】<後編>
まずは揺れから身を守る
黒田:同時に、揺れについても決して侮れません。【図1】から分かるように震度7や震度6強に襲われる地域がたくさんあります。東日本大震災よりも震源域が陸に近い分、直下型地震のような揺れの強さを兼ね備えている場合も考えられます。時間が長いだけでなく、かなり強く揺れ続けることを覚悟して、まずはその揺れから身を守らないことには、津波避難という次のステップには進むことができません。
――先ほどおっしゃっていたように「室内に居て転倒した家具類で怪我をしたり、閉じ込めに遭って津波から逃げ遅れてしまう」という状況は、何としても避けなければなりませんね!最後に、すぐできる対策や参考情報があれば教えてください。
黒田:津波避難のためにも家屋の耐震化や、室内の家具転倒防止対策が極めて重要です。津波避難訓練を頑張っておられる地域でも、ぜひこの基本的な対策を見直していただきたいと願っています。また、津波避難訓練の際に、3分間身を守る姿勢をとってからスタートして避難場所までの時間を計ってみたり、地震ザブトン(*6)等の体験装置で東日本大震災の観測記録や南海トラフ巨大地震の想定記録を使った揺れ体験をしてみると、よりリアリティのある内容になり、同時に楽しみながら学べる要素が加わって有効だと思います。京都大学防災研究所の矢守教授等の研究グループが高知県四万十町興津地区という集落で実施されている取り組み(*7)(*8)がとても素晴らしいので、チェックしてみてください。
(動画提供:白山工業株式会社)
なお、私が研修の場などで長年勝手に推奨しているのは、カップ麺を作る際に机の下で身を守る姿勢でじっと待つ!という、誰でもすぐにできる訓練です。いつでもどこでもできるうえ、3分という時間の長さが嫌というほど骨身にしみます。海溝型地震のリスクが高い地域では「地震は長く揺れるものだ」くらいに開き直って、楽しむ工夫を忘れずに真剣にやってみることをおすすめします。
――たしかにじっと3分間待つのは苦痛そうですが、なんだか楽しそうですね。
黒田:慣れてきたら、1分版または3分版の自己紹介やプレゼンを唱えて練習したり、それらしい長さの曲を鼻歌したり。やっているうちに時間の感覚が研ぎ澄まされ、「もう1分過ぎたな」と分かるようになったら、地震の時にきっと役に立ちます。
1分を超える揺れを発生させる震源はかなり大きいものであることから、「これは30秒程度で終わる直下型地震ではないな。海溝型地震かもしれないぞ。」という直感が働けば、「3分間は冷静に自分の身を守ろう(または周りの人を落ち着かせるように声をかけよう)」とか、「揺れが終わったらすぐに海や川から遠ざかろう。」などと主体的に判断して行動できるはずです。
スポーツなどと同じく、練習でできないことは本番では絶対に発揮されませんので、コツコツとやり続けられる自分だけの練習方法や対策を見つけられたら良いと思います!ちなみに、「カップヌードル」で有名な日清食品グループさんはローリングストック(*9)についてもわかりやすく啓発しながら新しいご提案をされています。楽しいし美味しい対策だったら続けられそうな気がしませんか?
「防災」に境目をつくって構えることなく、気持ちよい日常を維持するためのちょっとした工夫だと考えれば気が楽になると思います。まずは地震のことを理解し、自分たちに起こることを当事者として想像してみる。そこで、対応する知恵や技術が足りないことに気付けば、コツコツと身につけたら良いし、それは生きる力として日々の暮らしを豊かにしてくれるかもしれません。ただ、熱量を一気に上げると後でくたびれますので、怖がりすぎず、頑張りすぎずにできる範囲で続けていきましょう。