自分とちがう存在のひとと出会ったとき、どう接していいか戸惑ったことのある方へー『みえるとか みえないとか』
『みえるとか みえないとか』
さく:ヨシタケシンスケ
そうだん:伊藤亜紗
出版社:アリス館
表紙には、男の子と、かわいくてどこか愛嬌のある宇宙の星のひとたちが描かれているこの絵本。
うちゅうひこうしの”ぼく”が、いろんな星を調査して、うしろにもまえにも目が3つあるひとに出会い「後ろが見えないなんて不便でかわいそー」とか「ちゃんと歩けてすごい!」なんて言われて、ぼくはヘンな気持ちに。
「うまれつき ぜんぶの目が見えない」3つの目があるひととも出会い、世界の感じ方が全然ちがうことに気がついていく。他にも様々にかわいくて、どこかにくめない宇宙の星のひとたちに出会い、たくさん話をして、自分と違うひととの交流の一歩一歩が描かれています。
子どもたちは、きっと大人よりも敏感です。
幼稚園や公園の砂場の遊び場で、一人はぐれて遊んでいる子を見たことがあります。きっとそれは、その子に対して、何を話していいかわからない。どう接していいかわからない、から話しかけない、という行為に至っているのではないでしょうか。
コミュニケーションが大切だ、と言われる社会で、自分とは違う存在とどのようにコミュニケーションをとればいいのか、子どもにそれをどう伝えていいかわからない、そんな大人にも読んでほしい一冊です。
本書の中にこんなことが描かれているページがありました。
「じぶんと にているひとは、 あんしんできる。
その のりものの いいところも わるいところも わかるから。
じぶんと ちがうひとは、
やっぱり ちょっと きんちょうしちゃう。
じぶんと なにが ちがうかが、 よく わからないから。
わからないのは こわいから。」
この感覚は子どもも大人も同じなのではないでしょうか?
自分と同じ価値観、同じ境遇、同じ趣味を持つ人とはなぜか安心する。
一方で、そうじゃない人とはどこかわかりあえず、話すこともおっくうになってしまう。
自分と違うひとやものと出会った時の対応に1つの答えがあるのではなく、分かり合えないからこそ、わかろうと問い続け、葛藤し続ける姿を教えてくれます。