なぜ事前準備が必要か。“もめる相続”とは?|笑顔相続サロン® 小笹さんのお話②
京都市内にある笑顔相続サロン®にて。相談はサロン以外に自宅への出張も行う
「相続」と聞くと、いつかの話、自分とは関係のない話だと思いがち。でも、いざ当事者になったとき、 思いもよらない方向から問題が発生してしまうかもしれません。例えばどんな問題が起きうるのか、具体例とともに、相続コンサルタントの小笹さんに教えていただきます。
いざその時を迎えたとき、焦って不本意な選択をしてしまわないよう、誰かが傷ついたり我慢しなければならないような結果を生まないために、「今こそ」が相続について考えておく最良のときなのかもしれません。
笑顔相続サロン® 小笹さんのインタビュー
エンディングノートが本人と家族にもたらしてくれるメリット|笑顔相続サロン® 小笹さんのお話①
なぜ事前準備が必要か。“もめる相続”とは?|笑顔相続サロン ®小笹さんのお話②
相続、自分ごととして考えたことある?
インタビュアー(以下、「イ」):みなさん、どんな風にして相続の依頼や相談に来られるんでしょう?
小笹美和さん(以下、小笹):本当は、生前からご相談に来ていただいて、準備をしておけばいろんなことがスムーズにいくのですが、なかなかそうはいきません。
みなさん、事が起こってしまってから駆け込んで来られます。例えば「お父さんが亡くなったけど、家の名義を変えてなくて、どうすれば良いですか?」 というご相談で来られて、ヒアリングをしてみると実はそれだけじゃない……というパターンは少なくないです。
イ:それだけじゃない、とは?
小笹:名義変更よりも前にもっとしておかないといけないことが出てきたり、実は他にも相続を考えなければならない資産があったり、あとは隠れ相続人が出てきたり……そうなると長引きますよね。
そのほとんどが、生前に必要なことを整理して、遺言でもひとつあれば何も問題はなかったはずなのに……というものです。
イ:小笹さんは、そういった身内での揉め事などを起こさないよう、笑顔で相続が行えるように、という理念のもと、ここ笑顔相続サロン®をおつくりになったんですよね。
とはいえ、なかなか相続を自分の問題として具体的にイメージするのも、難しい気がします。小笹さんのもとに寄せられる相談のなかで一番多くの人が揉めるのは、どんなものがありますか?
もめやすい相続 ⑴不動産をどう分割する?
小笹:まずは不動産しかない、というパターンです。
相続人は2人以上いるのに、相続するものが不動産だけという場合。もしくは、不動産と少しの預貯金しか残っていない場合。2人兄弟で家と預貯金をそれぞれ相続しても、明らかに家の方が価値が高いとなると……もめますよね。「不公平だ!」となる。
イ:例えば2人姉妹で、残されたのが5000万の価値がある家と、200万の預貯金だとしたら?
小笹:それで、家にはお姉さんが既に住んでいるとなると、どうしてもお姉さんに軍配が上がってしまう。でも、妹からしたら「お姉ちゃんだけずるい」となりますよね。
イ:それをどう調整していかれるんですか?
小笹:そうならないようにするのが事前の準備なんですけどね。
そうなってしまうと感情がこじれてしまうので、なかなか修復は難しいです。話し合いにおいてはもう弁護士さんに入ってもらうしかなくなります。
イ:家を一回売ってしまってお金にしてから2分割するとかってことになるんですか?
小笹:でもお姉さんは住んでいる家を無くしてしまいますよね? でも出て行きたくはないから、お姉さんが妹の取り分だけ自分で借金をして、妹にお金を渡すっていうことになったりします。これは実際にあったことです。
イ:それは……
小笹:そうなると、そこの姉妹はもう二度と会えないです。借金させるんですからね。でも、争い始めるとお互いに引けなくなるので、そうなってもおかしくないんですよ。全然人ごとではないんです。
イ:人ごとではないですね。
小笹:はい。でも、そういう方ほど「うちにはお金ないから相続なんて関係ないわ」って言われるんです。「家は?持ち家?」って聞くと、「え、家は持ち家やで」って。「それもお金やで」って言うと初めて「ああ~!!」となる。
どうしてもお金っていうと、ちゃりんちゃりんのお金を想像してしまいますけど、相続では持ち家もお金なので。
もめやすい相続 ⑵介護があった場合
小笹:次にもめるケースは、介護をした人としなかった人の差が問題になる場合です。相続の前には必ず介護があると思っておいてほしいです。
介護ってね、私たちついつい体が触れるものが介護だって思いがちじゃないですか。例えば排泄の介助をするとか、入浴の介助をするとか。
でも、家庭のなかに高齢の方がいらっしゃって、その方のために一日食事を3回作る、ということも介護なんですよ。直接体に触れなくてもね。
「その方の生活を守る」というのが介護になるので、そう考えると介護ってものすごく早い段階からスタートしているものなんです。デイサービスに行き始めたからとか、寝たきりになったからとかじゃなくて。
イ:ご飯の買い出しとか、お庭の掃除とか……
小笹:そうそう。それは「親孝行」のうちに入ると言えばそうなんですけど、でも長く続けば誰かの負担になってしまったりとか、兄弟間で気持ちのズレが出てしまったりとかね。
例えば親の近所に住んでいる長女ばかりがお世話をして、次女は遠くにいて、とかね。長男は全然様子も見にこないとか。お世話が大変になっていけばいくほど、誰かが疎遠になってしまったりするんですよ。見て見ぬ振り、とかよくある話です。
イ:でもその貢献度を数値化したり、お金に換算するのって難しいですよね。
小笹:そうなんですよ。だから介護をよくした人が余分にお金をもらいやすいかといったら、やっぱり難しい。
相続は公平、介護は不公平です。気持ちのなかでね、どうしても不公平感が出てきてしまうんですよ。介護をしている人はどこかで他の兄弟よりも自分はよくやっている、とか、財産も多くもらっても良いんじゃないかって思う。
でも、親の方では「そうはいっても子どもたちには平等に財産を残してやりたい」と思ってしまう。そこにズレは出ますよね。
例えば、長男の配偶が介護をしていた場合も、その人には相続権がないんですからね。一番よくお世話をした人にお金がいかないんです。
民法の改正もあり、相続人でない長男の配偶者も金銭が請求できるようにはなりましたが、特別寄与料の請求先は義理の兄弟姉妹になるため、現実的にはかなり大変です。
イ:難しいことですね。
小笹:もちろんお金のためにやっているわけではないけれど、でも感情としてね、納得いかない気持ちになっても全然おかしくないです。
イ:さらに介護に対する認識、どこまでも介護とするか、という認識にも個人差がありますよね。介護をしていない人には全然見えていないんだけど、当の本人からしたらすごく負担になっていることもあるだろうし。
小笹:そうですね。生前に遺言を作成してもらって「介護をしてくれた誰々には何円を相続する」と書いてあればスムーズなんですけどね。保険で渡すとか、事前準備をすればいろいろ方法はあります。
もめやすい相続 ⑶離婚と再婚
小笹:3つ目は、離婚や再婚が絡んでくる場合ですね。
イ:具体的にはどういった事例があるんでしょうか?
小笹:例えば男性が亡くなったとして、その人の前妻さんに子どもがいて、今の奥さまにも子どもがいて、となったときに前妻の子どもさんにも相続権が出てくるんですね。
離婚はもうずいぶん前のことで、長い間今の奥さまと一緒に生活を築いて、働いて家を建てて……で、いざ亡くなられたときに、今の奥さまからしたら会ったこともない前妻さんの子どもさんと話し合いをしなければならなくなる。
イ:それは、揉めてしまう場合もありそうですね。権利はみんな平等なんですか?
小笹:はい。別れた奥さま、つまり前妻さんにはゼロですよ。でも、生まれた子どもは同じ権利を持っています。
離婚が円満に成立していればともかく、いわゆる略奪婚と言われるような場合であったりすると、さらに拗れてしまいます。
単に「離婚した」とか「介護した」とかいう事実だけでなく、その背景がいろいろと関係してくるので難しいんです。今回のケースで言えば、離婚したからといって全ての縁が切れるわけではないということを知っておかなければなりません。
イ:人間は感情の生き物ですから、どうしてもスパンと割り切るというのは難しいですよね。
ーー
相続の揉め事など、自分には無縁だと思っている人も、もしかしたらある日突然当事者になるかもしれない。そのとき、落ち着いて対応して後悔しない選択をするためには、前回の記事でご紹介したような事前の準備が不可欠なのだと小笹さんは言います。
次回は、笑顔相続サロン®の役割について、行政でのお仕事経験を交えてお話いただきます。“僧侶ができること”についてもアドバイスをいただきました。
笑顔相続サロン® 小笹さんのインタビュー
エンディングノートが本人と家族にもたらしてくれるメリット|笑顔相続サロン® 小笹さんのお話①
なぜ事前準備が必要か。“もめる相続”とは?|笑顔相続サロン ®小笹さんのお話②
【経歴】
・笑顔相続サロン®相続診断士小笹美和~ここはーと相続サポート事務所~代表
・京都相続診断士会会長
・一般社団法人社会整理士育成協会事務局長
・医療法人将医会提携医院 柴田歯科医院 顧問
【資格】
・介護支援専門員・介護福祉士・相続診断士
・社会整理士・終活アドバイザー
(笑顔相続サロン® ウェブサイトより)
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