「自分には何も出来ない」コンプレックスを持っていた直七さんが気付いたこととは|直七法衣店インタビュー<後編>
コンプレックスを強みに。限界に気付いた直七さんの出会い
ーー直七さんのお話を聞いていると、非常に熱意が伝わってきます。こうした熱意は、一体どこから来ているのでしょうか?
直七:やはり、法衣店に生まれたご縁をありがたく感じています。あと基本的に、自分がやりたいと思ったことはやり遂げないと気が済まないところもあります。最近はマシですが、以前はとにかく負けず嫌いで、寂しがりなところがありました。また、僕の持っている強みが、自分自身で好きでもありましたね。
ーーそんな直七さんの強みは何だと思われますか?
直七:僕の強みは、「ちょっと鬱陶しい」と感じられるくらい、ゴリゴリと前に進んで行くところかなと思います。
たまたまそういう強みを持っていて、それをより研ぎ澄まそうとこの生き方を続けてきて、だんだんそれが強くなってきて、とうとう歯止めが効かなくなって……っていう感じですかね(笑)
ーーそうした強みをお仕事に活かそうとされたきっかけは何ですか?
直七:コンプレックスなんですよ。僕は何も出来ないというか、昔から中途半端な人間で……。 親にも水泳やバイオリンといった習い事に加えて、塾も通わせてもらっていました。それこそ、地元の人に「毎日塾通い」って言われるくらいに。でも何もかも中途半端で、人より少し出来ただけで満足して終わってきたんです。
対して、僕の周りにいる職人さんは一つのことしかできない、でも「その分野では絶対に負けへんで」というプライドを持っているんです。それってすごく格好良いじゃないですか。けど、僕にはない。それがすごいコンプレックスだったんですよ。
今までは一人でゴリゴリとやってきたんですが、結局自分にできることなんて限られているんですよね。であれば、一人でやるよりもみんなで物事に取り組む方が、僕だけでなく関わる方も楽しんでもらえると気付いたんです。
ーー自身の限界に気付かれたからこそ、今の直七さんがあるのかもしれませんね。
直七:一人でやるよりも、誰かと組んでチャレンジをしたほうが新たな価値が生まれると思うんです。僕には法衣店の四代目という個性があって、物怖じしない個性があって、僕にできることをできる範囲でチャレンジし続けたいです。