「自分には何も出来ない」コンプレックスを持っていた直七さんが気付いたこととは|直七法衣店インタビュー<後編>
「袈裟は仏法そのもの」直七法衣店の思う袈裟や僧侶の価値
ーー直七法衣店さんにとって袈裟や僧侶とはどういう存在ですか?
直七法衣店 四代目 川勝 顕悟さん(以下:直七):僕は袈裟を「モノ」ではなくて、仏法そのものだと思っているので、商品を取り扱っているとは思っていません。単なるモノなのであれば、大量生産で安く販売すれば良いとも思っています。
消耗品で安いというのも一つの価値だと思いますが、だからといって袈裟をそれに合わせるつもりはありません。
僧侶にとって袈裟は仏法を伝えていくために重要なものですよね。必ず高級品を着てほしいとまでは思っていませんが、法衣を雑に扱っている姿や、傷んでいる袈裟をまとっていたら、残念に見られてしまうでしょうし。
いずれにしても袈裟というのは僧侶を表すものだと思っています。周囲から見れば、袈裟を着ていれば「僧侶」と思われるんです。
ーー確かに、初対面であっても法衣姿だと家の奥まで入らせてもらえる。これって凄いことですよね。長い歴史をかけて培われた信頼があるといいますか。
直七:おっしゃるとおりで、今ある信頼は2500年前から先人の方々が培ってくださったものなんですよね。そのご尽力や思いは大事にしたいですし、その象徴の一つである袈裟も大事に取り扱いたいです。袈裟が「モノ」ではないというのは、そういうことなんです。
ーーこれまで、メディアでは僧侶などに対してネガティブな情報が出ることもありましたが、直七さんがたくさんの僧侶にお会いして、感じられていることはありますか?
直七:例えば、僕は袈裟の魅力を語りだしたらいくらでも出てきます。僕がこうやって袈裟を紹介しているときって、多分、すごく好きで大切にしている感じが伝わっていると思うんですよ。僧侶のみなさまも、仏法や門徒(檀家)さんに対して真摯に向き合っておられると思います。