タイの仏教信仰はどんなもの?タイで暮らした日本人に聞いた|古山裕基さんインタビュー<前編>
タイのお坊さんってどんな人?
(写真提供:古山さん)
――お話を伺っていると、タイのお坊さんはとても尊敬されているようですが、タイのお坊さんはどんな人なのですか?
古山:タイのお坊さんは朝から晩まで、ずっとオレンジ色の僧衣を来ています。結婚もせず、戒律を忠実に守って生活をしておられますね。一方で、お説教で人を笑わせる事ができる話術をもっていたり、スマートフォンで情報収集をしている姿も見ました。「聖」と「俗」を上手に行き来しているのがタイのお坊さんのあり方なのかもしれません。
――タイのお坊さんの様子を見られて、すごいと思った部分はありましたか?
古山:積極的に医療と連携しているところでしょうか。タイのお坊さんは、高齢の患者さんと医療者の間に入る役割をされているんです。お坊さんが血圧を測ったりすることもありますよ。たまたま電池切れで血圧が測れなかったときがあったのですが、お坊さんは患者さんに「あんた死んでるよ」って。縁起でもない冗談ですが、それでもお互い大笑いしていました。お坊さんだからこそ言える冗談なのかもしれません。
特に農村部では不慣れからか、医者に対して緊張する人もいらっしゃるんです。ですが、お坊さんだと、冗談を交えられるくらい関係性が深いので、病気に関する悩みも色々と言えるんだと思います。
また、タイの農村部ではほとんどの人が自宅で命を終えていかれます。なので、お坊さんは終末期看護で必要な酸素注入器や、痰を除去する機械の使い方も知っていて、患者さんに使い方を教えたり、場合によっては手伝ったりしています。
(写真提供:古山さん)
日本と同じく、タイも超高齢社会です。地方では病床や施設が不十分で、お坊さんに医療的な部分も含めた「看取り」の役割を担ってもらう動きがあり、近年ではタイの保健省とお坊さんが協力してガイドラインの作成や、講習会の開催といった取り組みも行われました。
日本でも医療と仏教の連携が進んでいると聞きましたが、もしかすると、タイでの連携のあり方も今後の参考になるのではないでしょうか。
<インタビューの続きを読む>
「おじいちゃんはヤモリに生まれ変わった」タイの人びとが持つ死生観とは|古山裕基さんインタビュー<後編>