「長いおつきあい」その裏で求められる鍛錬とは|木村共宏さんインタビュー②
“Should”と”Want”の葛藤
岡山県での新造船引渡式(2004年撮影)
ーー自分の感情とはどのように向き合えばよいのでしょうか?
木村:「自分の感情と向き合う」というのは永遠の課題でしょうね。これは地道な鍛錬だと思います。感情という言葉も広いので、向き合うべき感情の代表として煩悩(あるいは欲望、したいこと)を例に挙げるなら、「すべき」ならしてよし、「すべき」でなければしない、という判断を繰り返し行うことですね。
僕は常に”should”(すべきこと)と”want”(したいこと)に切り分けて考えるようにしています。したいことが出てきた時、すべきことは何かを考えます。したいことがすべきことであれば問題ありませんね。
ところが、この2つが一致しないことがあります。すると2つのうちどちらかを取ることになりますが、感情に負けると”want”を取ってしまう。遊びたいけど、勉強すべきときに、遊んでしまうパターンです。しかしそれでは上手く行かない。対人関係なんかも特にそうですが、”want”か“should”のどっちを取るべきかといえば圧倒的に”should”です。
自分の中で”want”と”should”がせめぎ合って、最後に”should”を勝たせられるようになれば、自分を制御するコントロールの能力が上がったと言えるでしょう。これは日常の地道な鍛錬でしか得られません。
ーーその鍛錬は何故必要なのでしょうか?
木村:自分のやりたいことばかりを優先していては人は離れていきます。いつも美味しいところばかりを持って行って、面倒なことは人に任せるようでは誰もついて来ませんよね。人間は元来面倒くさがりですし、wantを優先すると、人に嫌なことを押し付けることが増えます。それでは長期的に良い関係は生まれません。まずは自分を律し、shouldを優先して行動することだと思います。そういう人の意見は受け入れてもらえるでしょうし、信頼も得られると思います。
編集後記
木村さんインタビュー第2回、今回は木村さんの商社時代の経験を通して、長期的な視点に立つことと、そのために必要な精神のあり方を教えていただきました。
事業におけるプロジェクトの期間が長ければ長いほど、乗り越えなければならない壁は多く立ちはだかります。その時に、チーム内や取引先との「ご縁」が大きく問われます。そして、「ご縁」を長く続かせるにはどのようにすれば良いかを問い続け、「自らを律する」という一つの答えを木村さんは導き出されました。僧侶への転身時に、「何も変わらなかった」と振り返るのも頷けます。
ある意味、なるべくして僧侶になられた木村さん。最後に、現代における僧侶や寺院のあり方についてお聞かせいただきました。(第3回へ続く)
僧侶としてどうあるべきか?|木村共宏さんインタビュー③
1972年、神奈川県生まれ。
大学卒業後、三井物産株式会社にて18年勤務。海外ビジネスに従事する傍ら、2009年9月より鯖江市地域活性化プランコンテストのアドバイザーを務める。
2015年3月に退職し、企業顧問・コンサルタントを務める傍ら、2016年4月より3年間、鯖江市地域おこし協力隊に就任。2017年10月に得度し、僧侶となる。
2018年4月より浄土真宗本願寺派の企画諮問会議委員、2019年4月よりNPO法人インド太平洋問題研究所副理事長、同年9月より未来の住職塾NEXT 講師。