伝えたい想いを文章に乗せるメソッド│前田純代さんインタビュー<後編>
「好き」+「経験」=「わかりやすく愛される文章」
――では、前田さんが文章を書かれていて特にやりがいを感じるのはどんなときでしょうか?
前田:やはり、読者の方が喜んでくださるときです。もともと文章を書くのは好きだったんです。私は、お掃除やお料理をしたり、お花を生けたりすることはあまり得意ではありません。でも、文章を書くことと絵を描くことは小さい頃から好きでした。
小学校のとき、学校の課題で日記を書いたときのことをよく覚えています。先生や家族は私の書いた日記を「いつも楽しみにしているよ」「いつも面白い日記を書くね」って褒めてくれたんですよ。
その頃から、私の作品を楽しみにしてくれている人、面白いと思ってくれている人がいることが大きな励みになっていますね。今でも私の書いたものを読んで喜んでくださる方がいることがわかると嬉しいですし、書いていてよかったなと思います。
ずっと原稿を書いていると、行き詰まったり、まったく書く気が起きなくなったりすることもありますが、読者の方が喜んでくださると、また書こうと力が湧いてきます。
特に今、コロナ禍の状況下では対面してお話しすることが難しいぶん、文章を通して皆さんと繋がっていることを実感しながら執筆していますね。
絵:前田純代
――子どもの頃の親御さんや先生の声掛けが前田さんの書く力を育ててきたのですね。他にはどのような体験が、今の前田さんの文章を形作っているのでしょうか。
前田:私の文章の土台となっているのは、英語の小論文なんです。2年ほど留学したことがあったのですが、そのために通っていた予備校で、小論文の指導を受けていました。
当時先生から何度も言われたのは、「とにかく結論をはっきり書きなさい」ということでした。「AかもしれないしBかもしれない」とか、結論のはっきりしない文章を書くのはやめなさいと教えられましたね。また、結論に関係のないことは書かない、捨てなさいと言われました。とにかくシンプルに、結論を明確に、と意識して文章を書くようになりました。
――そのご経験が、今の前田さんの文章の基盤になっているのですね。結論の定まった前田さんの文章は非常に読みやすく感じます。
では最後に前田さんの今後のご展望を教えてください。
前田:『仏教こども新聞』は、すべての子どもとその保護者の方に読んでもらえるようにしたいと考えています。無料にしたり、オンラインにしたり。お金がかかるから読めない、取り寄せるのが面倒だから読まないなどということがないように提供の形を工夫したいと考えています。
――前田さん、ありがとうございました。
<編集後記>
前田さんの文章が、大人子ども関係なく、わかりやすく相手に届くのは、結論を明確にする文章術はもちろんのことですが、その底にある相手への思いやりが鍵であるように感じました。相手のことを思うからこそ、言葉を選び、内容を整理して最も伝えたいことを伝える。その想いが伝わるからこそ、前田さんの文章は多くの人に愛されているのだと感じました。
プロフィール
1973年生まれ。東京大学文学部社会心理学科卒。
野村総合研究所勤務。フランスHEC経済大学院MBA修了。
中央仏教学院卒。広島市・善法寺坊守。『仏教こども新聞』編集委員長。