「法話って何?」素朴な疑問を通して価値観を揺さぶる漫才法話│那須弘紹さんインタビュー

僧侶の道へいざなった別れと出会い

 
――お話を聞いていると、那須さんのこれまではとてもご縁に恵まれた人生でもあったのかなと感じました。そこからなぜ僧侶として活動されるようになったのでしょうか?
 
那須:タレントとして東京の事務所に行く予定もあったんですが、実家から祖父の体調が良くないという連絡が来て、大学を卒業した1年後に帰ることになりました。ところが帰ってみると、実際祖父は特に何ともなくて。親は何とかして私に帰ってきてほしいという気持ちがあったんだと思います。結局、熊本のラジオ局で番組を持って、タレントとしての活動を続けていました。
 

熊本放送のラジオ生放送時の写真(写真提供:那須弘紹さん)

 
那須:正直、「ちゃんと僧侶になろう」と思ったきっかけは、友人が亡くなったことです。彼は浄土宗の僧侶で、少し歳は離れていましたが仲の良い友人でした。私が30歳ぐらいのときに亡くなったんですが、亡くなる10日前ぐらいに熊本に遊びに来てくれたんですよ。そのときもう既に思うように体が動かなくなっていたのに、それでも私に会いに来てくれたんです。
 
何でそこまでして会いに来てくれたのか?何か言いたいことがあったのではないか?と思いを巡らすようになり、そこからいのちや僧侶の役割について考えるようになりました。
 
「一応私には僧侶の籍がある、中途半端にしていてはいけない」と思い始め、タレントとしての仕事は好きでしたが、ふんぎりをつけてお寺に戻りました。
すると別の問題が出てきたんです。
 
――どういった問題でしょうか?
 
那須:得度以降、僧侶としての勉強をあまりしてこなかったんです。いざお寺でつとめるとなったときに、周囲の僧侶の話題についていけない。これは一から勉強し直さんといけんな、と思い、浄土真宗本願寺派の「住職課程」(現在は布教使課程全寮制コース)に参加したんです。
 
私以外の方は、より僧侶としての専門性を磨くために入所されていましたが、私はもっと手前の段階でした。しかしそんな私にも親身になって教えてくださった先生方と出会えたご縁が今でも私の宝物です。本当に充実した3か月間でしたね。
 

実際に那須さんが使われていたファイルノート(写真提供:那須弘紹さん)

 
――ご友人の死が僧侶への道にいざない、住職課程でのご経験が那須さんを僧侶として飛躍させるきっかけになったのですね。
しかし、ラジオパーソナリティーのご経験も今に活かされているのではないでしょうか?

 
那須:そうですね。布教使として法話をさせていただくとき、今までラジオパーソナリティーなどのタレント活動をしてきた経験も活きているんだと気付きました。正直、住職課程で勉強していたとき、タレントをやっていたことは回り道だったんじゃないかと思ったこともあったんです。
ですが、そうじゃなかった。タレントをやっていた経験も決して無駄ではなかったんです。
 
人生の中に無駄なものは何一つない。今はそう思っています。
 
 
 

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掲載日: 2021.10.11

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