「法話って何?」素朴な疑問を通して価値観を揺さぶる漫才法話│那須弘紹さんインタビュー

仏教への「入り口」はどこ?漫才法話を通して見えた実際

 
――那須さんが僧侶として活動されるようになって、気付いたことや驚いたことはありますか?
 
那須:よく気付きをもらうのは「漫才法話」をしているときですね。
 

 
そもそも漫才法話を始めた理由は、皆さんがもっと仏教に親しみやすくなるような、「入り口」になるような法話をしよう、と思ったからです。でも、漫才法話をやってみて気付いたのは、それが「入り口」にもなっていなかったということです。
 
――「入り口」についてもう少し詳しくお聞かせください。
 
那須:仏教とのご縁を結ぶ入り口です。
講演の席では質問をお受けすることがあります。こちらが事前に想定している質問といえば、その法話の中身についてですが、実際に皆さんからいただく質問は、もっと根本的なところなんです。例えば、「法話って何ですか?」みたいな。法話という言葉自体、一般的には通じないんや、と驚きましたね。
僧侶と接点のない人たちからしてみると、私が思っていた「入り口」はもっと先にあるものなんだと痛感しました。これは漫才法話をしたからこそわかったことだと思っています。
 
――たしかに、那須さんの投稿されている動画内でも法話とは何かを説明されていました。そういった相手の立場に立ってお話ししていくことが、親しみやすさに繋がるのかもしれません。
 
那須:もともと私は原稿を書くだけで漫才をする担当ではなかったんです。ところが、出る予定だった人が一人出られなくなり、台本を知っている私がピンチヒッターとして出ることになったのが始まりです。
そのときから、今の相方でもある藤岡教顕(ふじおか・きょうけん)さんと一緒に漫才をするようになりました。
 
――漫才法話において大変なことはありますか?
 
那須:漫才法話はやっていて楽しいですが、通常の法話よりも大変ですね。
掛け合いをする相手がいるので、台本も用意しなくてはいけないし、日にちを合わせて練習もしなくてはいけませんし。それでも笑ってもらえるのは嬉しいんですよね。
 
ですが、依頼が増えてきた矢先に、新型コロナウイルスによる感染症が拡大し、人前でお話する機会がなくなってしまいました。そこで、YouTubeに漫才法話の動画を投稿することにしたんです。
 
正直最初は、YouTubeに投稿したくはありませんでした。YouTubeというメディアを使うと、一瞬の娯楽として消費されるだけで終わってしまうかもしれない、と思ったんです。でも出演予定だった講演が軒並みキャンセルになって、世の中も自粛ムードが広がってギスギスした雰囲気になって……。そんな状況だからこそ法話を伝えていくべきではないかと考えて、YouTubeを始めようと決めたんです。
 
――そのような葛藤があったんですね。
漫才法話を作るときに大切にされていることはありますか?

 
那須:漫才法話をやるからには、1%でも法話の要素が入ってないといけないと考えています。普通の漫才のネタを、僧侶が言っているだけでは意味がないと思うので、少しでも浄土真宗の教えを伝えていきたいですね。
ただ、YouTubeでは話題性のある動画や面白い動画がよく再生されます。これまでに10本ぐらい動画を投稿していましたが、一番評判が良いのは某芸人さんがされているネタを拝借したもの。もちろんその動画にも法話の要素はあるものの、残念ながらよく再生されている一番の理由はその芸人さんの話題性があってのことだろうと思います。
さっき言っていた「入り口」という意味でも、まだまだだなぁ、と思います。
 
――YouTubeに動画を投稿されるようになって良かったと感じる点はありますか?
 
那須:「漫才法話」というものを知らない人たちに見てもらえる機会が増えました。YouTubeのコメント機能などを使って感想をいただけるのも嬉しいですね。一番嬉しかったのは、ガンで苦しんでいる人や、ジェンダーの問題で苦しんでいる人たちが感想をくれたことです。メディアを使っていなければ届くはずのなかった人に届いて、その人たちに少しでも笑ってもらえると思うと、やって良かったなと思います。
いつか、そんな人たちの前で漫才法話をしてみたいですね。動画ではなく、対面で。
 

(写真提供:那須弘紹さん)

 
 
 

「揺さぶる価値観」と「そのまま」

   

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掲載日: 2021.10.11

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