「お念仏がありがたい」と感じる僧侶が奏でる音色│秋津智承さんインタビュー<後編>

 

心に浸透する音楽のちから

 

平和コンサートでの演奏の様子(写真提供:秋津さん)

 
――秋津さんが僧侶として大事にされていることはありますか?
 
秋津:私の場合は、「皆さんと仏教を共有しようとすること」が重要だと思っています。それをご法話や読経を通してすることも大切なのですが、私の場合は音楽で、という思いがあるんです。
歌詞のないチェロの演奏が、心にはむしろ言葉よりもスッと入っていける部分もあると思うんです。例えば、私はお通夜のときチェロを持っていくんですよ。そしてお葬儀の最後、少しご法話をした後、チェロを弾かせてもらうんです。
 
――お通夜でチェロを?
 
秋津:はい。弾く曲は有名な曲ですよ。バッハの「G線上のアリア」。
うちのお寺では「ゆく年くる年コンサート」の他にも「平和コンサート」をしています。その平和コンサートの最後、来てくださった方にお焼香をしてもらうんですが、そのとき「G線上のアリア」とシューベルトの「アヴェマリア」という曲を弾いたんです。
 

平和コンサートでのお焼香の様子(写真提供:秋津さん)

 
この曲はチェロとの相性が良いと言ってもやっぱり宗教的な色が仏教とは違うので、お寺で弾く曲じゃないと思われるかもしれません。でも亡くなった方を偲ぶ思いで弾くと、その気持ちの共有はできると感じました。後からご門徒さんに取ったアンケートでも、音楽についての否定的な意見はありませんでしたね。それからお通夜のときにも弾くようになりました。
 
――実際お通夜の場でチェロを演奏すると、どのような反応がありますか?
 
秋津:例えば、お葬儀の場で初めてお会いする方もいらっしゃいます。その場合、施主さんやご家族に亡くなられた方がどのような方だったかお聞きするんですが、同時にチェロの演奏をしてもいいか聞きます。でも断られることのほうが少ないですね。そして実際に演奏すると、お通夜の前と後でご家族の表情がコロッと違うんですね。
お通夜の後って、大事な方を失った悲しみや、これからの手続きの忙しさなどで何をしても元気が出ないし、緊張もなかなか解けないと思うんです。その中で、音楽が少しでも癒しになれば。音楽を聴くことで、硬かったものが柔らかくなったり、滞っていたものがすーっと流れていったりしてもらえればと思いながら弾いています。演奏を聴きながら思わず涙される方もいらっしゃる。そういう瞬間を見ると、やっぱり音楽がその方の中にスッと入った作用なんじゃないかなと思いますね。
 
それに、演奏がきっかけだとしても、「今日はよかった」「この間の葬儀はよかった」とおっしゃるその空気感は今後のご縁にも繋がります。僧侶と演奏家という2つの側面を持つ難しさを感じていたこともありましたが、今はもう葛藤は吹き飛んでいるような気がしますね。
 
 

「お念仏がありがたい」と感じる僧侶が奏でる音色

   

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掲載日: 2022.04.13