無名のお坊さんTikTokerが「バズる」まで|上本周作さん(しゅうさん)インタビュー<中編>
「しゅうさん」こと北海道玄誓寺の上本周作(うえもと・しゅうさく)さんへのインタビュー。前編では、音声交流SNSであるClubhouseの活用手法についてお伺いしました。
中編、後編にわたって、上本さんにTikTokの活用手法についてお伺いします。中編となる今回は、上本さんがTikTokを始められてから、多くの方に認知されるまでに行った試行錯誤の様子を覗かせていただきましょう。
今から始めても遅くない!?音声交流SNS “Clubhouse”のススメ。|北海道玄誓寺 上本周作さんインタビュー<前編>
TikTokとは?
TikTokの様子(画像提供:上本さん)
――前回のインタビュー(リンク)で、ClubhouseがきっかけでTikTokを始められたとお伺いしました。今回は、TikTokのご活用について教えてください。
上本 周作さん(以下:上本):ClubhouseでTikTokの活用を勧められた当時、TikTokはなんだか若い人が踊っているSNSというイメージを持っていました。ですが、今後TikTokは使い方次第で有効な伝道ツールになると、Clubhouseで知り合ったインフルエンサーの方に教えていただいたんです。
その方以外にも、TikTokの活用を後押ししてくださる方がいらっしゃいましたし、何より私が新しいもの好きでもあるので、試しに登録してみました。
すると、数名ではありますが僧侶の方もいらっしゃいました。それで、まずは楽しみながらこの方々の真似から始めようと、TikTokでの活動をスタートさせたんです。
「自利利他円満」をテーマに制作した動画を通して、仏さまの智慧にふれて「ハッ!と」、そして仏さまの慈悲にふれて「ホッ…と」していただけるよう目指しています。
――そもそも、TikTokってどんなSNSでしょうか?
上本:TikTokとは、簡単に言うと15秒から3分程度の短い動画を投稿できるSNSのことです。日本では2018年頃から、若い世代を中心に流行し、現在は国内だけでもおよそ1000万人が利用しているといわれています。
TikTokはショート動画の先駆けと言われていて、当初は私のイメージ通り、若い世代がダンスをしている動画が中心でした。ところが、ここ1年でユーザー平均年齢は34歳に引き上がったそうです。動画の内容も、弁護士による法律の解説から動物に関することまで、多種多様になってきました。
また、こうしたショート動画はInstagramやYouTubeも追随し、今では見ない日は無いぐらいに成長しています。忙しい現代、僅かな時間で観られる動画が楽しみたいという需要があるのかもしれません。
――つまり、平たく言うと短い動画のSNSということですね。ですが、3分が上限の中で仏教を伝えるのは結構難しいのではないでしょうか?
上本:実際、難しくて何回も心が折れました。動画で仏教を伝える難しさも確かにありましたが、それ以上に動画を投稿しても全然再生回数が増えないところがつらかったですね。当時はとにかく再生回数を伸ばそうと、試行錯誤する日々でした。
「顔出し」か?「文字だけ」か?試行錯誤の連続
(画像提供:上本さん)
――試行錯誤の経緯を教えてください。
上本:最初は自分自身が出演する「顔出し」の動画を作り、今度は顔を出さず、声と文字のみで構成された動画に切り替え、そして現在は再び顔出しの形へ戻る、という経緯を辿っています。
――「顔出し」するかどうかで試行錯誤されたわけですね。途中、顔出しをやめられたのはどうしてだったのでしょうか?
上本:顔出ししても再生回数がなかなか伸びなかったんですよ。どの動画も再生回数がせいぜい150回くらいでした。TikTokのシステムには俗に「最低再生保証回数」というものがあって、最低でも150回は再生してもらえるという暗黙の了解があるんです。
そこから成長して、コンスタントに200回ぐらい再生されるようになるとTikTokの「おすすめ」欄に表示され、より多くの人に観ていただけるようになる、という仕組みです。
なので、当初はなかなか200回再生までたどり着かないのが悔しかったですね。動画編集も慣れておらず、1本作るのに3時間はかかっていました。3時間もかけて結果は200回再生……費用対効果で言えば最悪ですよね(笑)。
さすがに限界を感じ、すでにTikTokでご活躍され、多くのフォロワーを抱えておられるインフルエンサーの方に相談してみたところ、綺麗な背景に字幕を乗せ、その文字にアテレコ(映像に合わせて声を当てること)すれば良いのではないかと提案していただきました。で、そのようにしてみると、たまに500回再生を超えるまでになったんです。
それでも平均再生回数は依然として200回程度でした。ただ、ノウハウが蓄積され、動画制作の労力が少なくなっていったのと、時折コメントで褒めてくださる方や応援してくれる方もいらっしゃったので、諦めずに続けられましたね。