話し方から生き方を変える?トークデザインのおもしろさとは│中島至さんインタビュー<後編>
話し方が生き方を変えるきっかけになる
――トークデザインでこだわっていることはありますか?
中島:最初の言葉かけですね。例えば、頑張ってこられた方に「くよくよするな」や「頑張れ」とは絶対に言いません。こういうとき、阿弥陀さまならどういうお声掛けをしてくださるだろうかと想像して考えて言葉を選んでいます。
――「阿弥陀さまならどうするだろう」という想像による姿勢が、中島さんの言葉かけの根底にあるのですね。
これまでトークデザインで受けられた相談にはどのようなものがありましたか?
中島:ある時「企画を立ち上げたいが部下がついてきてくれない」という相談を受けたことがあります。その際は、
・つながっているということは、すべての物事も連鎖しているということ。
・ウイルスとともに不安が広がったように、人間の感情も連鎖していくということ。
といったことをお伝えした上で、
・『私は今日一日笑顔で頑張ります。もし笑顔じゃなかったら、私を注意してください。皆さん楽しんでいきましょう』といった言葉をかけてみること。
・指摘や促しだけではなく、私がまず率先していくと、笑顔が連鎖していくということ。
といった内容を提案させていただきました。
――浄土真宗から紐づけて、綿密に考えられた提案をされているんですね。
しかし、それをそのまま実践して、すぐに生き方が変化するものなのでしょうか?
中島:いいえ。例えば、私が提案させていただいた言葉をそっくりそのまま友人相手や職場で反映しても、突然人間関係が変化することはないと思います。ただ、話し方と生き方は密接にリンクしていると思っています。
少し話は逸れますが、アンパンマンの技は「アンパンチ」ではなくアンパンを差し上げることだと聞いたことがあります。なぜアンパンマンが愛されるかというと、我が身を犠牲にしているから。我が身を犠牲にする生き方だからこそ、アンパンマンの言葉には説得力があります。
私たちの身近なところにも似ている方がいらっしゃいますよね。我が身を犠牲にしてでも私たちを救うと誓い成就された阿弥陀さまです。
このように、生き方に信頼や親しみがある人はおのずと話し方からも信頼や親しみがにじみ出ると思うのです。
しかし生き方から変えるのは難しいと感じる方も多いはずです。だからまず話し方を変えてみて、継続することが大切だと思っています。そうしていると、だんだん価値観や考え方が変わり、生き方に変化が表れるのではないでしょうか。