花それぞれが活かし合う?お佛華の生け方とコツ│藤田徹信さんインタビュー<前編>

 

お佛華はどうやって生ける?

 

図1

 
――お花を生ける上でのコツがあれば教えてください。
 
藤田:イメージができないものを生けるのは難しいので、まずお佛華をお供えする空間のなかでイメージすることが大切だと思います。
 
例えば本堂ですと前卓の上に花瓶を置いてみて高さ、左は何cm、右は何cmまで伸びても大丈夫、といった情報をメモにとって設計図のような絵を描いてみたりします。
あと、お佛華は花瓶の水際(みずぎわ)(花瓶と花の足元の間の部分)を空けたところから上に向かってどの程度の高さになるか計算していきます。水際は花瓶の大きさによって多少変わりますが、だいたい1寸(3センチ)ぐらいでしょうか。このとき、天井の高さはお寺によっても違うので花瓶の高さの何倍という表現は控えておきます。
また、真を大きくしたり、花を増やせば自ずと高さも出ますが、間延びしてもよくないので、「真」*1の部分とのバランスも大切したいですね。
次に横幅です。まず、お荘厳同士が当たらないようにする必要がありますね。外側は「副」や「控」輪灯に当たらないように、内側は「流」*1が香炉の中心にかからないところまで、その中でのびやかに生けるといいと思います。(*1 図1右側のイラストを参照)
 

お仏壇用のお佛華を生ける手順(画像提供:藤田さん)

 
藤田:また、お佛華はまっすぐ立つのが理想ではありますが、不安定な場合は後ろに反らせる方がいいですね。前に倒すと背景が覆いかぶさって勢いのない花に見えます。
 
――縦、横、奥行きと教えていただきました。それでは、お花を長持ちさせる方法はありますか?また、造花は使ってはいけないのでしょうか?
 
藤田:まず、お佛華は佛前のお供え物です。同時に、いのちのありようを私たちに見せて大切なことを教えてくれているように思います。つぼみから盛りを迎えて枯れて朽ちていくといういのちのいとなみ、それぞれ自分らしく咲いて、そしていのちを全うしていく。あなたもそうですよ、変わらない存在ではないけれど、あなたらしくあればいいよ、と大切なことを私がいただくという意味では、枯れない造花では「いのちのいとなみ」を受け取りにくいので、私は生花がいいと思います。
 
でも置かれている状況にはさまざまあると思いますので、あえて極論をいうと、そもそもお供え物は「これでもいいか、わるいか」という心の運びではなくて、お敬いを形に表すものだと思うんです。こうでなければダメだとか、これぐらいでいいかではなく、そのひとそのひとの「今の自分にできる精一杯」をお供えするというのが大事だと思います。
精一杯の形が造花という方もあるでしょうし、生花であっても敬いに欠けるということがあると思います。なので「今の私の精一杯か」を自身に問うていただければと思うんです。
 
お花を長持ちさせたい場合、一番大切なのは水替えを頻繁に行うことです。それが難しい場合、一番長持ちするのは青物を用いる方法ですね。夏場の平常時にはハランやソテツ、槙などで青物一式を生けることもあります。
 

(写真提供:藤田さん)

 
藤田:ご本山でも立教開宗記念法要、宗祖降誕会、伝灯奉告法要などにお供えされる「松一式」という生け方もあります。
松毬(まつかさ)や松葉をむしった枝松を赤や白に染めたものを花に見立てたりして、とにかく松のみで生けます。ただし、これは楽をするためや日持ちさせるための生け方ではなくて、通常の色花を織り交ぜた雑華式(ざっかしき)よりも遥かに手間暇も費用も掛かる生け方です。最上のお敬い、よろこびを表す佛華でもあります。私のお寺では報恩講の時に生けさせていただいています。
 

(写真提供:藤田さん)

 
藤田:費用を抑えるという面で言うと、お家によっては裏山に花が咲いていたり、花農家さんと知り合いだったりという環境で花が手に入る場合もあるかもしれません。あるいは、自分でお花を育てるという手段もあります。育つまで時間はかかりますが、定着してくれば費用対効果が良いかもしれませんね。
またご門徒さんにお願いしてみるのもいいかもしれませんね。お声掛けをしておくと何かと気に掛けてもくださいますし、それならばと花材調達を助けてくださることもあります。私の場合、庭先のウメモドキや南天、花瓶の中で土台となる米わらを分けてもらうこともありますし、佛華用にと剪定くずを庭師さんが持ってきてくださることもあり、いろいろ助けてもらっています。
 
 

お佛華を生けるときの合言葉?

   

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掲載日: 2022.11.14

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