介護の分野で、お寺や僧侶ができることとは?|野の風デイサービスセンター 森下広大さんインタビュー<後編>
お寺がデイサービスを始めるには?
(画像提供:森下さん)
――高齢者施設をお寺が運営する意義はどういったものがあると思われますか?
森下:一般的に高齢者世代は、お寺に対して安心感を抱いている方が多いです。一方、福祉施設は敬遠する傾向にあるようです。もしかすると、お寺がやっている福祉施設なら利用される方もいらっしゃるかもしれません。NPO法人の場合は限界がありますが、施設でのご縁を通して、法座や月忌参りとは違う新たなご縁の可能性があると思います。
――これからお寺の人がゼロから福祉事業を始める場合、どういったステップを踏むと良いのでしょうか?
森下:理想的なのは、現場に入って経験を積むことでしょうか。実際に福祉施設で働き、施設のノウハウを学ぶのは必須と言えるでしょう。その上で将来的にやるべきこと、やりたいことを見つけるのが大切だと思います。
また、施設は個人で運営できるものではありませんので、一緒に活動してくれる人を探すのは経験を積むことと同じくらい大切ですね。働く中で理想像を共有できる方と出会うこともあります。もし出会いがあれば、その方とは関係をつくっておくと良いでしょう。いざ立ち上げるときに、協力していただけるかもしれません。
特に、我々はお寺と施設の掛け持ち状態になるので、どうしても片方から離れてしまう時間が発生します。その際、留守番をしてくれる方が居て成り立つので、その方を見つけられるかどうかは非常に大きな要素になりますね。
大変な業務ではありますが、やっぱり笑顔を見ると支援をするモチベーションは上がりますし、人生経験豊富な利用者さんとの交流から、学ぶことや得られることは多いですよ。
――最後に、今後のご展望をお願いします。
森下:基本的には現状維持の方針を取っており、積極的に規模を拡大しようとは思っていません。新しい環境を求めるよりは、今の環境を守ることに重きを置いています。とはいえ、一緒に働く職員さんもそれぞれ想いを持っておられるので、その方の意思も尊重しつつ、今後の方針を決めていこうと思っています。
現在は、「元気だけどやることがない方々」が活躍できる場所を模索しています。
施設にはボランティアとしてお手伝いしていただいている方がいらっしゃいます。その方は後期高齢者ですがお元気な方で、介護サービスは受けていないという状態です。利用者と職員の間に入ってくださっており、ご自身も生きがいを見出しておられます。
こうした、高齢でもお元気な方は多くいらっしゃると思います。そうした方々に何を行っていただけるかを模索している段階ですね。
――ありがとうございました。
編集後記
今回は、僧侶が設立したデイサービスセンターの事例を森下さんに教えていただきました。
自然豊かな場所という立地の良さもさることながら、日々僧侶として活動されている森下さんだからこそ出来上がる場がそこにはあるのではないでしょうか。
日々、老いの苦しみに向き合う介護施設には、僧侶が発揮できることがあるとともに、僧侶として学ぶべきこともたくさんあるのかもしれません。
森下さん、ありがとうございました。