新卒で僧侶になった釈優希さんが大切にしていることとは|釈優希さん(中村有希さん)インタビュー<後編>

 

「妹は仏さまとなっていっしょにいるよ」浄土真宗のみ教えに支えられて。

 

(画像提供:中村さん)

 
――中村さんはさまざまなご活動をされていますが、どうしてそこまで精力的に活動できるのでしょうか?
 
中村:他者の為に生きたいんですよね。個人的な見解ですが、自分の為にやっているうちは良い結果に繋がらないと思っています。「情けは人の為ならず」ではありませんが、活動を続ける中で最終的に自分の為にもなっていくと信じていて、そこに私のモチベーションがあると思っています。
 
――そもそも、僧侶になることに対して抵抗はなかったのでしょうか?
 
中村:実は、私が小学校4年生の時に事故で妹を亡くし、仏の教えに救われた経験があるんですよね。なので、僧侶に成らせていただくことに抵抗はないどころか、ありがたいことだと感じています。
 
――そんなご経験があったのですね……。
 
中村:子どもながらに、無常さを感じましたね。直前まで何事もなく一緒に過ごしていたのに、一瞬にしてそれが失われるわけです。妹はかつて住んでいたマンションのベランダから転落して亡くなりました。その原因も、私が風邪を引いて母親が近所のクリニックへ行こうと、妹から目を離した隙に、ベランダへよじ登って……というものでした。なので、「私が風邪をひかなければこんなことにならなかったのに」と後悔にさいなまれましたね。でも、母が一番つらかったと思います。
 
その後、お聴聞を重ねていくうちに「妹さんは仏となり、常にそばにいてくださるのよ」と教えていただきました。「還相の菩薩」ですよね。目に見えない形になっても、私たちの近くに居てくれるということが心の支えになりました。
母もそれがきっかけでお寺に戻ることになり、今日につながっています。母も私も、仏さまと共に歩んでいることを感じながら、日々を過ごしていますね。
 
それでも、フラッシュバックのように思い出すことがあります。あれから十数年経過しましたが、最近になってようやく打ち明けられるようになりました。
 
――中村さんがなぜ「今」を大切にされているのかが分かりました。
 
中村:明日生きられるか分からないからこそ「今」が大切なんですよね。でも、今という時代は頑張らないと評価されない、辛い時代でもあります。
浄土真宗のみ教えはそうではありませんよね。頑張る、頑張らないにかかわらず、誰もが救いにあずかることのできるみ教えです。それこそが浄土真宗の魅力で、それは「南無阿弥陀仏」で伝わるのが本来の姿ですが、なかなか現代には響きません。だから、創意工夫をして、み教えを皆さんに伝えられればと思います。
 
昨今、お寺の存続が厳しいと言われますよね。でも、それはお寺のあり方が現代に即していなかった結果に過ぎず、できることを最大限取り組んでそれでもダメだったらしょうがないと思っています。それは決して諦めているわけではなく、あれこれと工夫した結果、将来にわたって残りつづけられれば、それは社会の中で価値があった結果だと受け止めたいですね。
 

(画像提供:中村さん)

 
――ご活動における、今後のご展望をお願いします。
 
中村:現在はお寺の近所に居住しています。近い将来、お寺に住むことになったらもっといろんな活動をしていきたいですね。例えば、私は猫が好きなので、お寺で保護猫の譲渡会も夢の一つです。さまざまな活動を通して、これまでご縁がなかった方にもお寺へ来ていただけるよう、今後も工夫を続けられればと思います。
 
多岐にわたって活動をしておりますが、全ての根底にあるのは、ここのお寺、このお坊さんなら安心だな、お世話になりたいな、と思っていただけるように努力をすることです。
昨今の葬送儀礼は、「煩わしいのは嫌だ」、「コンパクト」、「効率」といったことが世間から求められており、また宗教離れもより一層深刻になっているのが現状です。
私は儀式やみ教えの有り難さを今一度知っていただきたいと切に願っております。
私と出会った人すべてに温かいご縁を、このお寺でよかったと思って頂けるように、これからも邁進していきます。
 
――ありがとうございました。
 

(画像提供:中村さん)

 

編集後記

 
今回は、大阪府光明寺の中村有希さんにインタビューしました。
子ども食堂にお弁当配り、そして御縁帳、SNSでの発信……様々な活動をパワフルに展開されている若き僧侶の生き方の裏には、幼少期のつらい経験、そして仏さまとの出会いがありました。
 
中村さん、ありがとうございました。
 

   

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掲載日: 2023.03.14

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