「あなたがいてくれて本当によかった」……ホッとする言葉を門前に掲げる、お寺の掲示板の活動|京都府法行寺 熊本博史さんインタビュー<前編>
お寺の掲示板に言葉が掲示されるまで
(画像提供:熊本さん)
――はじめに、ご活動の概要をお願いします
熊本:概ねご想像の通りかもしれませんが、1か月に1〜2回、法語という形で私が感じたことやお伝えしたいことをお寺の掲示板に掲示する活動です。あまり堅苦しい法語は書かず、例えば、「しんどくなったら休みましょう」といった文言を筆ペンで書いており、最近はイラストを交えることもあります。
――掲示板のご活動に注力されたきっかけがあれば、教えて下さい。
熊本:入寺した時、お寺の門の横に掲示板はあったものの、使われていない状態だったんですよね。それで、ふと書いてみたいなと。掲示板を通して伝道になるのであればと思い、住職にも了承を得て実行に移しました。
お寺の前を通る方からは、お寺にどんな僧侶が居るのかが分かりませんよね。掲示板を通して、少しでも私の人物像も感じ取っていただければと思い、活動しています。
――日々、お寺の掲示板ではどういった言葉を掲示されていますか?
熊本:色々とありますが、「気にしない、気にしない、一休み、一休み。」、「年は取りたくない、病気になりたくない、人の世話になりたくもない。死にたくもないけど、いつまでも生きていたくない。」、「あなたを決して離さない」、「あなたがいてくれて本当によかった」といった言葉を掲示しています。
他には、季節感を大切にした言葉や時事ネタを取り扱うこともあります。昨今はどちらかというと見聞きしたくないようなニュースも多いですが、それらに対して直接的ではなくとも、なんとなく私の受け止めたことを表現していますね。
――熊本さんがこれまで書かれてきた中で、一番好きな法語はなんでしょうか?
熊本:「あなたがいてくれて本当によかった」です。これが私の一番好きな言葉ですね。
当然ですが、お寺に住まう私が一番お寺の門をくぐっていますよね。つまり、それだけ掲示板の言葉を見る頻度も高いわけです。なので、お寺へ戻ってきた時に掲示板に掲げられたこの言葉を見て、自分自身が救われたんですよね。
――確かに、お寺の掲示板は自分へのメッセージにもなり得ますね。
熊本:そうですね。「あなたがいてくれて本当によかった」っていう言葉、言われてみたいですよね。でも、世の中でなかなか他人から言われる言葉では無いと思います。もしかすると、そうした「言われてみたい」言葉を伝えることも、お寺の掲示板に求められている役割なのかもしれません。
――ご活動を続けられて、どういった反応がありましたか?
熊本:普段のお参りでお付き合いをしている方は、直接声をかけてくださいます。「気にしない、気にしない、一休み、一休み。」という法語に対しては、「ホッとする」とのご感想をいただきました。楽しみにもしてくださっていて、この活動を続ける原動力にもなっています。
一方、通りすがりの方とはお話まではしないものの、写真を撮られたり、メモを取られたりされる方もいらっしゃります。
(画像提供:熊本さん)
(画像提供:熊本さん)
面白かったお声としては、掲示板のすぐ近くがゴミの収集場所で、特に狙ったわけではありませんが「分別つける人の知恵、分別超える仏の智慧」という言葉を掲出したところ「ゴミのことか?」と聞かれたこともありました(笑)。