人々への想いを告げる、仏教の出発点【釈尊のことば】
人々への想いを告げる、仏教の出発点
(写真:AC)
(『本願寺新報』 2015年(平成27年)4月10日(金)号より)
(スッタ・ニパータ145偈)
釈尊は、ご自身も含め、私たちにとって生きることは身体的にも精神的にも、苦しみや悲しみに充ちたものであり、さらに、そんな生存のあり方を限りなく繰り返す輪廻も苦しみだと考え、出家修行し悟りを完成して、そういう苦しみから脱しました。
ご自分の悟りを完成された後、瞑想をさらに深めるうちに、人びとに対する慈しみの想いが生じ、釈尊はとうとう教えを説くことを決心されました。この一句は、そのような釈尊の人びとへの想いを告げる大切なものです。まさに、慈しみの想いが生じたからこそ、仏教が始まったのです。
ところで、釈尊は、まず自分の力によって苦しみから脱する道を説かれましたが、それは必ずしもすべての人びとが歩める道ではありません。そこで、この「すべての命あるもの」への想いを徹底して実現しようとしたのが、法蔵菩薩なのです。法蔵菩薩は、あらゆる命あるものを救おうという誓いを建てて、とうとうその誓いを完成し、阿弥陀さまとなられたのです。この阿弥陀さまの誓いの力によって救われていくのが、他力の道です。
こうしてみると、釈尊のあらゆる命あるものへの慈しみの想いは、阿弥陀さまによって現実のものとなったと言えましょう。
さて「、すべての命あるもの」と訳した仏教用語は、「一切衆生」と知られています。「衆生」というのは、人間だけではなく、動物をも含み、場合によっては 植物も意味します。仏教では、人間だけが特別な存在だとは考えないのです。
また「幸福」「安楽」と訳した言葉も、「お浄土」や「極楽」と深い関わりをもった言葉でしょう。
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