「評価を気にしなくていい。安心できる居場所はお寺だった」せいざん株式会社池邊文香氏インタビュー<後編>

必要とされるお寺のサポートを

 
ーー今後の展望をお聞かせください。
 
池邊:弊社は大きな成長をのぞんではいません。大きくなることよりも老舗の企業のように続けることを大切に守っていきたいと思います。お寺がなくなってしまうと、企業理念も全うできないですから、お寺とともに歩み、長く続けることを第一に考えています。
家単位では無く、個人の価値観でお寺が選ばれる時代です。私たちでお役にたてることがあるお寺であれば、必要とされるお寺となるためのお手伝いをしていきたいですね。
 
毎月お困りごとや相談ごとを抱えた僧侶の方が、過去にお手伝いした僧侶のご紹介でお問い合わせくださいます。こんな小さな会社を頼っていただけて、ありがたいことです。そのお気持ちにお応えできるように一人ひとりの僧侶と共に悩み、考え、お手伝いしていきたいと思います。
 
お寺は時代に合わせ、工夫をしたり変わらなければならない面も多々あるかと思いますが、一方で、一般の方も仏事について誤解していたり情報が多すぎて疑心暗鬼になっている方もいらっしゃるので、私は双方に対してはたらきかけて供養や弔い文化の守るべきものは守る姿勢を大切にしていきたいと思います。
 
多くの方はつながりを求めていらっしゃると実感しています。弊社で管理させていただいている納骨堂では、「お誕生日おめでとうカード」をお送りしています。
がんの告知を受け、ご自分と息子さんのために納骨堂を契約された方がいらっしゃいました。お誕生日カードを、6年間お送りさせていただきました。その方が亡くなられてご遺体を迎えに行った際に、枕元に6年分の誕生日カードが置いてあったということです。ありがたかったと同時に身が引き締まる思いがしました。これからもひとつひとつのつながりを大切にし、「敬う心」を広めるお手伝いができればと思います。
 

編集後記

厳しい評価社会の中で、自分の存在が肯定され、独りではないことを確認できる居場所が求められています。そして、お寺はそのポテンシャルを秘めていることをあらためて感じました。
ただし、その力を発揮するためには、信徒や地域の方一人ひとりと丁寧に向き合い、行動する覚悟が欠かせません。いちお寺では難しいこともあるでしょう。せいざん株式会社さんのような同じ方向を向いている方々と連携し、行動することで地域になくてはならない存在に近づいていける気がします。
 
 

   

Author

 

他力本願ネット

人生100年時代の仏教ウェブメディア

「他力本願ネット」は浄土真宗本願寺派(西本願寺)が運営するウェブメティアです。 私たちの生活の悩みや関心と仏教の知恵の接点となり、豊かな生き方のヒントが見つかる場所を目指しています。

≫もっと詳しく

≫トップページへ

≫公式Facebook

掲載日: 2021.10.14

アーカイブ