お仏壇のニーズがV字回復したのはなぜか?│株式会社はせがわ代表取締役社長新貝三四郎さんインタビュー<前編>
写真提供:株式会社はせがわ
生活様式が変化する中で、仏間で存在感を放つ重厚なお仏壇ではなく、リビングに溶け込むお仏壇が主流となりつつあります。お墓と同様に、次世代への継承も悩ましい問題です。
伝統の継承と時代の変化への対応はあらゆる伝統産業の永遠の課題ですが、これらを高次元で両立し、好業績を示す企業があります。お仏壇業界最大手の株式会社はせがわ代表取締役社長の新貝 三四郎(しんがい・さんしろう)さんにお話をうかがいました。
――まず、株式会社はせがわの事業内容を教えていただけますでしょうか。
新貝三四郎さん(以下 新貝):弊社は1929年に福岡県直方市で創業し、現在全国に130店舗(西日本地区 26店舗、関東地区95店舗、東海地区9店舗)を展開しております(2021年10月現在)。主な業務は仏壇・仏具、墓石の販売や屋内墓苑の受託販売です。おかげさまで、業界トップシェアで、東証一部にも上場しております。お客様の「大切な方のために出来る限りのことをして差し上げたい」という尊いお気持ちに敬意(敬い)を払い、“お仏壇のはせがわ”を選んでご来店いただいたことに対して感謝し、最上のおもてなし(礼儀)を尽くすことを大切にしております。
36年前、就職活動の際に、手を合わせることがより良く生きるうえで欠くことのできない行為であり、それに貢献できる商いであることに興味を持ち、はせがわに入社しました。そして2021年の1月に6代目社長に就任しました。
写真提供:株式会社はせがわ
私は長崎県の佐世保市出身で、浄土真宗本願寺派 元海寺の門徒ですので、法事などでお寺さんとの接点があり、幼い頃から自然に浄土真宗の教えを聞いておりましたので、お仏壇には馴染みがありました。現在弊社では年間27,000基のお仏壇を販売しております。20~30年前までは伝統型のお仏壇が7割を占めていたのですが、いまは伝統型が2割、家具調のリビング型が8割と逆転しております。地方では、伝統的なお仏壇と仏間を中心とした生活が残っているところもあります。ところが都市部では、お仏壇があったとしても大半がリビング型です。仏間に置くのではなく、リビングに置くという方が増えています。この傾向は全国的に広がっていくと思います。仏教の伝統からすれば、もしかすると外れているのかもしれませんが、日常の生活空間にお仏壇が溶け込んでいるという意味では、故人や仏さまとの距離が近くなったとも言えるのではないでしょうか。
我々はお仏壇を販売するプロとして、御本尊を何のために置くのか、などの基本をきちんとお客様にご説明した上で、ニーズに応じて現代風に変えていく柔軟性も求められています。たとえば、カリモク家具株式会社と協同開発したお仏壇は大変好評でした。お仏壇の様式は変化し続けています。根底にある、手を合わせる心の大切さを提唱しつつ、新たな形を提案しています。現代人は日常生活においては他の家具に溶け込むお仏壇を求めますが、お寺にお参りしたときは、伝統的な様式を保っていただき、畏敬の念を持って手を合わせるというような棲み分けが必要だと思います。