悔いのない人生と明るく前向きな社会の実現を目指して|清水祐孝さん((株)鎌倉新書 代表取締役会長CEO)インタビュー<後編>

講演会の様子(新型コロナウイルス感染症拡大前)(画像提供:(株)鎌倉新書)

 

 
ーー御社では“終活”をどのように定義されていますか?
 
清水祐孝さん(以下 清水):一般的には、死に備えて葬儀やお墓の準備をすることを終活だとイメージする方が多いと思いますが、本来はいまから未来に向かって生きていくための活動だと思っています。自分がいま死を目の前にした地点にいると仮定し、そこから今日の自分を見つめた時に、人生でやっておきたいことや、やらなければいけないことに、優先順位をつけながら悔いなく取り組んでいくことが終活だと私は考えています。
 
ーー終活がこれだけ注目されるようになったのは、なぜでしょうか?
 
清水:たしかに、いま終活セミナーはにぎわっています。高齢化の進展に加え、人口移動によって親子の物理的な距離感が変わったため、終活に取り組む必要性が出てきたと考えています。終戦直後は多くの方が一次産業に従事し、地元で就農することもよくありました。人があまり移動しない時代です。その頃は地元に住む子どもが親のことをよく把握していました。かかりつけの病院や付き合いのあるお寺様のことも知っていました。よって、その時代には終活は必要ありませんでした。ところがいまは、子どもが都会に就職して親元を離れ、親の状況を知りません。親が自分自身である程度準備をする必要が出てきたことが、注目されている理由のひとつだと思います。
 

鎌倉新書のビジネスモデル(画像提供:(株)鎌倉新書)

 
ーー終活の難しさは何でしょうか?
 
清水:終活は大事なことですが、後回しにされがちです。中には葬儀等差し迫ったものもありますが、基本的に終活には明確な締め切りがありません。人間、いつかやろうという、期限がないものにはトライしづらいものです。たとえば近しい人が急に亡くなったことがきっかけで、資産の整理や遺言書の作成に取り組んだりすることはありますが、あまり長続きはしません。終活は、元気な間は「しなければならないこと」ではなく、「できればやりたいこと」だと捉えられています。
 
このため、ビジネスとして成立させるためには、漠然とした需要を顕在化し、具体的な行動へと導いていく必要があります。たとえば遺言書を準備する人は、現状では100人中2〜3人くらいだと思います。ですが、これを10人くらいに増やすことはできると考えています。ある程度の需要を顕在化することができれば、世の中全体の取組み状況も自然と引き上げられていくと考えています。
 
ーー葬儀の意味や価値について、どのようにお考えですか?
 
清水:いつの時代も葬儀は重要な学びの場だと思います。葬儀は人の死を通して、自らの生を考える大切な機会です。私自身も親を見送ったとき、故人は先生であり、遺された者に学びを促す存在だと実感しました。また、弔辞にも3つの意味があるのではないでしょうか。①故人へのメッセージ、②会葬者へのメッセージ、そして③亡くなっても故人は存在しているという証明です。近年は葬儀が小規模化していますが、個人的には故人の人生を家族だけで締めくくってしてしまうのは少しもったいないとも思います。生前、会社や地域の方々など、さまざまなつながりをお持ちだった方は少なくありません。家族のかたちに合った葬儀を選べるように、メディアとして葬儀の価値を社会に伝えていきたいと思っています。
 
 

   

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掲載日: 2022.04.08

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