「いまこそ「お寺でお葬式」。おみおくりに最適な理由とは。(前編)」小林弘和さん(「お寺でおみおくり」一般社団法人日本寺葬(てらそう)協会 代表理事)インタビュー<前編>
寺院葬は難しくない。越えるべき心理的ハードルとは?
――逆に、寺院葬のデメリットは何でしょうか。
小林:デメリットは設備面の不安です。本堂の収容人数を心配されることがありますが、寺院葬の参列者の規模は、平均して10人から50人ですので問題はありません。参列者が多い場合でも、庫裡の廊下などもご利用いただくなど、受け入れは可能です。また、駐車場のスペースが不足している場合がありますが、近隣の方が貸してくださるケースもありますし、やりくりは可能です。
そして、冬場の寒さ対策も求められますが、カーペットなどを導入することで寒さ対策なども十分に可能です。車椅子などのユニバーサルな配慮やバリアフリー化についても、持ち運び型のスロープや手すりを利用したり、段差にクッションをひくことで対応できます。いずれにせよ、現状の設備+αの工夫で、十分に寺院葬は実現可能なのです。
寺院葬説明会の様子(写真提供:「お寺でおみおくり」)
――寺院葬を広げるにあたってのハードルは何でしょうか?
小林:利用された方の満足度は高いのですが、現状ではまだまだ寺院葬についてご理解いただけていないお寺さんが多いのが課題です。お寺の坊守さんからすると負担が大きいイメージがあり敬遠されることがあります。たとえば、葬儀の準備作業の負担を漠然と不安視されています。私どもはそういったご心配に対して、葬儀前後のそうじも含めて、万全のサポートをさせていただいています。
また、坊守さんはお寺に迎える喪主さんとの距離感が掴めずに、気疲れされることを心配されています。これについても、プライベート空間にも配慮したオペレーションをご用意しておりますので、不安を解消できます。このような寺院葬を始めるにあたっての先入観を払拭していきたいと考えております。実際に寺院葬を行っていただくと、お寺としてのメリットも少なくありません。お寺に参られることでご縁ができますし、いただいた本堂使用料は護寺にも役立ちます。
そのような利点が少しずつ口コミで広がり、現在寺院葬に賛同されているお寺さんは133か寺ほどになりました。一方、寺院葬をサポートする葬儀社も増やす必要があるため、現在「お寺でおみおくり」加盟店を全国の仏事産業の方を対象に募集をはじめていて、すでに多数の申込みとご賛同もいただいております。これから各種業界誌やセミナーを通じて、お寺さんや葬儀社にもっと知っていただければと考えています。
なぜ葬儀に宗教家が必要か。「寄り添う」から「導く」へ<後編>