本当に葬儀を簡素化してよいのか?|全日本葬祭業協同組合連合会 専務理事 松本勇輝さんインタビュー<後編>
前編に引き続き、全日本葬祭業協同組合連合会(以下、全葬連)の松本勇輝専務理事にお話をうかがいました。
煩わしさも含めて人づきあい
――昔と比べ、葬儀に関してどのような変化を感じますか?新型コロナウイルス感染症の拡大による変化などはありますか?
松本勇輝さん(以下:松本):昔はご親戚やご近所さんに、葬儀のことを教えてくれる方がいましたが、地域コミュニティの崩壊とともにそういった方は少なくなり、式も小規模化しています。家族葬もすっかり一般的になりましたが、葬儀の後で問題になることも少なくありません。全葬連の窓口でも、葬儀に案内されなかった方から、本当は行きたかったのにという不満の声をお聞きすることが多いのです。何らかのお別れをしたかった、という思いを抱えておられます。やむを得ない事情があるならばともかく、ご遺族が安易に葬儀を簡素化し、縁を断ち切るのは心配になります。
以前、とある簡素な家族葬の後に、施主さんのご自宅に伺う機会があり、あまりの立派なご自宅に驚いたことがありました。葬儀をする経済的な余裕がないわけではありません。それなのに、お世話になった方々をちゃんと呼んでお別れせずに、本当にいいのかな、と寂しく思いました。人との関わりはたしかに面倒な側面があるかもしれません。煩わしさも含めて人付き合いのはずです。だれにも関わらずに生きていくことはできません。いろんな方にお世話になっているはずです。
最近は、新型コロナウイルス感染症の拡大によって縁を断ち切る傾向に拍車がかかっています。葬儀に行かなくていいんじゃないの、というある種言い訳ができてしまったためです。葬儀社はエッセンシャルワーカーのようなものですから、感染が拡大する中でも粛々と葬儀を行っています。
しかし、簡素化の流れが加速したことは確かで、スピードが10年くらいすすんだように感じています。一方で、葬儀に参列したいのだけど、緊急事態宣言中に行っていいんですか?という問い合わせを受けたこともあります。高齢で最後の機会になるので是非参列したいのですが、迷惑でしょうか?とおっしゃるのです。ご遺族に相談して、感染対策をしながらも、しっかりとお別れをしていただくようお勧めしました。
講演「最近の葬儀事情について」(写真提供:全葬連)
――葬儀で求められているのはどのような僧侶でしょうか?
松本:教義についてお話しされるだけではご遺族に伝わりにくいと思うので、故人のことも法話の中に一言でも入れていただけると有り難いです。故人がどのような方だったのか、ということを事前にお聞きしておき、法話に盛り込むとご遺族に伝わりやすくなると思います。
逆に、ご遺族を傷つけるようなことを言ってはいけないと思います。中にはお悔やみを言う前にお布施の話が先行したり、日程等も含めてご自身の都合を押しつけるだけの僧侶の方も中にはいらっしゃいます。信頼できる方とそうではない方と、二極化しているように感じられます。ご遺族と丁寧に向き合っていただくことで信頼を得ることができるのではないでしょうか。