催しを通して、地域の不安に寄り添う|「徳地のえんがわカフェ」ー山口県超勝寺
(画像提供:大來さん)
多くの高齢者にとっての心配事である「認知症」。そんな悩みに対し、催しを通して寄り添うお寺があります。
山口県の超勝寺では、本堂を活用して「徳地(とくぢ)のえんがわカフェ」と呼ばれる認知症カフェを行われているそうです。これは、いったいどんな催しなのでしょうか?超勝寺住職の大來尚順(おおぎ・しょうじゅん)さんにお話を伺いました。
きっかけは、病院の少ない地域ならではの不安
(画像提供:大來さん)
――「徳地のえんがわカフェ」とはどういったご活動なのでしょうか?
大來尚順さん(以下:大來):「徳地のえんがわカフェ」とは、2016年より行っている、お寺の本堂を活用して、一緒にゲームをしたり、体操(ヨガ)をしたり、お茶などを飲みながら楽しい時間を過ごす催しです。認知症について知りたい方、認知症が心配な方、認知症の方、介護をされている家族の方、お世話をしている地域の方、ちょっとお茶を飲んで一息つきたい方など、どなたでも参加していただくことができます。毎月第2木曜の13時半から約2時間、開催しています。
――ご活動のきっかけは何でしょうか?
大來:かねてより、人が集まるお寺にしたいと思っていたのが最初の出発点です。というのも、私が子どもの頃から、法事や葬儀以外でお寺に人が集まる様子を見たことがなく、このままだとお寺を維持できなくなると感じていました。
もともと当寺は門徒数が少なく、法座も年に2回のみ。その法座もどんどん参拝者が減り、地域との交流もほとんどありませんでした。
どうにかしてお寺に人を集めたいと思い、お寺の本堂を活用してキャンドルサービスやカラオケ大会、オーケストラを招いてのコンサートといった催しを行いました。それなりに人は来たものの、どうもご門徒からの評判が良くなかったんですよね。
――それはどうしてだったのでしょうか?
大來:結局、それらがご門徒の方々が求めているものではなかったからなんです。
とはいえ、当時は私も理由が分かりませんでした。それで、思い切ってご門徒の方を対象にアンケートを取ることにしたんです。アンケートを通して①お寺についてはどう思うか、②住職についてはどう思うか、③これからのお寺に対する期待、そして④不安なことは何かをお尋ねしました。
――結果はいかがでしたか?
大來:①〜③については、当たり障りのない答えが返ってきましたが、④に対しては、「病気が怖い」という地域の方の本音が返ってきたんです。
その理由を考えてみると、地域には病院が少なかったからなんですね。超勝寺のある山口市徳地地域は人口が約5,000人いますが、アンケートを採った当時は病院が2つしかなく、しかも週に何日かは休診していました。つまり、医療サービスが非常に不安定で、地域の方が不安になるのも無理もない状況だったんです。
――ご門徒の方々が求めているのは「医療」や「健康」だったわけですね。
大來:そうですね。それで、医療や健康という問題に着目し「お寺で話そう」という催しを3か月に1回のペースで始めました。
これは、隣町の病院の先生がボランティアで来てくださり、栄養やアレルギーなど、身体の健康に関するさまざまなテーマを医学の立場からお話しいただき、その後、数分ではありますが私が法話をして、グループに分かれて振り返りや雑談を行う、という催しです。
「お寺で話そう」では、健康に関するいろんなテーマを取り扱っていましたが、その中でも認知症というテーマは特に注目されていました。裏を返せば、それだけ認知症を心配している人が多かったんです。
また、認知症カフェが山口ではほとんど開催されていないことも分かりました。ならば、お寺を活用して認知症カフェを開こう、となったわけです。
それで、「お寺で話そう」から認知症のテーマだけを独立させて、より専門的に取り扱うイベントを始めることにしました。これが「徳地のえんがわカフェ」です。