イタリアン精進料理から産まれた最中。生産の過程で気づいたお寺の魅力。|ごきねぶり最中―広島県浄謙寺<後編>
広島県浄謙寺 浄謙恵照(じょうけん・えしょう)さんへのインタビュー。前編では、イタリアン精進料理の様子を教えていただきました。
後編では、そんなイタリアン精進料理がご縁となって販売に至った「ごきねぶり最中」のことや、浄謙さんが思うお寺の魅力と今後の展望について伺っていきます。
豊かな自然の恵みをお寺で味わう。|イタリアン精進レストランー広島県浄謙寺
ごきねぶり最中について
ごきねぶり最中(引用:勝原白貫堂公式webサイト)
――「ごきねぶり最中」とは、どういう商品でしょうか?
浄謙恵照さん(以下:浄謙):「ごきねぶり最中」とは、「御器ねぶり」と呼ばれる品種の小豆で作られた最中のことです。主に町内の道の駅や当寺で販売しています。来年度はデパートでも販売予定です。
9年前、イタリアン精進料理を食べに来てくださったお客様が「この御器ねぶりは広島県の小豆だから、広島で育てて増やしてほしい」という思いで数粒の小豆をくださったのがきっかけです。
その後、お寺と地域で連携して小豆の生産を続けていると、町内の和菓子店「勝原白貫堂(かつはらはっかんどう)」さんがたまたまお寺に来られたときに関心を示してくださり、「ごきねぶり最中」という商品を開発することになりました。
――「御器ねぶり」とはどういう小豆でしょうか?
浄謙:この「御器ねぶり」とは広島県固有種で、現在は生産者が少ないため大変希少な品種だと言われています。「御器ねぶり」は、古い言葉で「御器(ごき=お皿)に残った餡をねぶる(=なめる)ほど美味しい」というのが由来です。
――商品の特徴を教えて下さい。
浄謙:最中では、香り豊かな御器ねぶり小豆の良さがしっかり引き出されています。また、餡が入っている瓶と、最中の皮が別々に梱包されているところも大きな特徴ですね。
一般的に販売されている最中は最初から皮に餡が詰まった状態で販売されていると思います。一方、餡と皮を別々にしておくことで、長持ちするんですよね。賞味期限が長くなることで、販路が拡大しやすいというメリットを享受できており、最中の販売方法としては理想的だと感じています。
御器ねぶり小豆(引用:勝原白貫堂公式webサイト)
――小豆を生産する中で、ご苦労されたことはありますか?
浄謙:生産者がすごく少ないということで、生産量を増やすのに大変苦労しています。当然、お菓子として販売するには一定の生産量が必要なので、近所の方に種子を提供し、生産を協力していただきました。もちろん、私自身もスタッフと協力して門徒総代さんの休耕田をお借りして小豆を生産しています。
約3年の歳月を経て、ようやく数十キロの生産ができる段階に達し、商品化に漕ぎ着けました。最中の製造に関しては和菓子店に一任していますが、味やデザインは一緒に考え、クラウドファンディングも実施しました。そこで集まった資金は商品化にかかる費用に充当しています。
――最中を販売されて、手応えはいかがでしょうか?
浄謙:2022年8月より本格的に販売を開始し、12月までの5か月間で合計300箱は販売されたと聞いています。一箱2,970円と決してお手頃とは言えない価格設定なのですが、希少な小豆であることや手作りであること、そして、こういうものにこそ価値を見出していきたいという思いがあるので妥当な価格だとも思います。予想に反して在庫を抱えることなく販売できたのでお菓子屋さんも驚いていました。
――すごいですね。
浄謙:おかげさまで、人気商品になりました。現在は生産者が足りない状態で、私が通っていた高校の農業の先生に打診し、高校でも生産していただくことを検討しています。また、小豆の生産過程では選別作業も必要で、それをB型就労支援の施設にも手伝っていただいています。まさに、地域の方を巻き込んで生産をしている商品ですね。