環境に配慮した店舗づくりとエネルギー選択|パタゴニア京都インタビュー<後編>

 

■パタゴニアが考える未来とは

 
――パタゴニアが考える未来は、どのようなものなのでしょうか?
 
森井:僕たちパタゴニアだけが環境に良いことをしていても世の中に与える影響は少ないので、他の企業も環境のことを考えるよう変わっていって欲しい、と考えています。そのために、環境を優先していても企業として成長できるという実例を僕たちが示すことによって、他の企業にもそういう風に舵取りを変えてもらえれば、と。今一番わかりやすいのは、他の企業にも再生可能エネルギーを導入してもらうことでしょうか。
 
また、企業が変わるためには消費者も変わる必要があります。お客様が、企業に対して環境問題に対応することを求めてもらいたいと思っています。
パタゴニアでは「買うことは減らし、求めることは増やす」というメッセージを発信しています。これはどういうことかというと、お客様も商品を買うときにはしっかり吟味していただき、環境に良いものや自分に本当に必要なものを購入するようにしていただきたい、もしそういったものが市場に無ければ作るように企業に求めていただく、という動きをおすすめするものです。お客様がそうした意識を持つことによって、社会や企業が変わっていけば良いなと思います。
 
篠:パタゴニアとしては、環境問題の解決のためにビジネスだけでなく、資金やブランドメッセージを含めたあらゆるリソースを駆使していこうと思っています。
 
現代は多くの人が技術によって、ある意味での豊かさを享受している、そういった世の中です。単純に環境に配慮した技術などが導入されることによって、環境への悪影響を減らすことは可能かもしれません。ですが、それによってどんな副作用があるのかを見極めていかないと、結局「CO2は減らしたけど自然環境は残っていない」というようなことにもなりかねません。それでは駄目です。
 
そう考えると、人間が繁栄していくためにはエネルギーと環境への配慮を両立させるような社会が必要ですし、自然環境が健全に残っていくことが、あらゆることの基盤になると思っています。
 

<編集後記>

エネルギーを選択することは社会や環境保護への意思表示。
こうしたパタゴニアの選択は、利潤追求組織である企業というよりも、ある価値観を共有する人びとによる共同体を連想させます。
こうした取り組みを知ったとき、私たちはどのような態度をとるべきなのでしょうか。
同じ未来を目指すのか、距離をとって別の選択をするのか、それとも無視するのか。
私たちは選択のときを迎えているのかもしれません。
その先には、どんな未来が待っているのでしょうか。
 

 

<プロフィール>

 

森井 正次
アウトドア好きが高じて10代からカヤックインストラクター、登山ガイドを生業にする。年々悪化する自然環境を肌で感じ、環境保護活動に熱心な企業理念に惹かれ2012年パタゴニア入社。2017年からパタゴニア京都店で「環境社会活動責任者」として京都を中心に、環境や社会問題をビジネスを通じて解決する方法を模索している。滋賀県在住、趣味は渓流釣り。

 

 

篠 健司
1988年、米アウトドア・ブランド、パタゴニア日本支社に入社し、広報、店舗運営などを担当。一旦、同業外資他社で2年間勤務するも再び入社し、環境団体の支援プログラムを担当した後、コアバリューのひとつ「不必要な悪影響を最小限に抑える」を実践するために、再生可能エネルギーを含む環境・社会責任のある調達、ゼロ・ウィストなどのサステナビリティを担当している。社外ではアウトドア業界の自然保護基金である一般社団法人コンサベーション・アライアンス・ジャパン監事、公益社団法人日本自然保護協会理事。休日は身近な自然の中でトレイルランニングを楽しんでいる。

 

   

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掲載日: 2021.09.14

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