環境に配慮した店舗づくりとエネルギー選択|パタゴニア京都インタビュー<後編>

 

 

 
 

■再生可能エネルギーとパタゴニア京都

 
――パタゴニア京都の店舗の特徴はどのようなところだとお考えでしょうか?
 
森井正次さん(以下、森井):まず、国内で最大のフロア面積をもっているという点ですね。イベント専用の部屋もあって、京都のさまざまな環境団体にイベントの場として提供させていただいています。また、京都ストアで使用する電力が再生可能エネルギー由来であることも、他の企業から見れば特徴的なことなのかもしれません。
 
――パタゴニアの店舗は一部の店舗が再生可能エネルギー由来の電力を使われているとのことですが、実際どのようなものなのか詳しく教えてください。
 
篠健司さん(以下、篠):店舗やオフィスに限らず、私たちが直接電力会社と契約している施設は、全て再生可能エネルギー由来の電力を提供してくださっている電力会社や小売り電力事業者さんに切替え済みです。
 
パタゴニア京都の店舗は、直接電力契約をしていない店舗のなかでは再生可能エネルギー由来の電力への切り替えが一番早かった店舗です。実はパタゴニア京都の店舗が入っている建物はテナントビルなので、私たちが勝手に電力契約をするわけにはいかない施設でした。ですが、ビルのオーナー様に再生可能エネルギー由来の電力に切り替えをしていただくように働きかけた結果、オーナー様がそれに応じてくださったおかげで、2020年に切り替えることが出来ました。
 
またその電力も、ただの再生可能エネルギー由来の電力、というわけではありません。兵庫県の豊岡市でソーラーシェアリングという手法を用いて作られる、営農型太陽光発電によるものです。これは、パタゴニアが坪口農事未来研究所に直接投資させていただいて実現したものです。有機農法でお米や野菜を作られている田んぼや畑で発電された電気を、「みんな電力」という電力会社さんにご協力いただく形で、パタゴニア京都の店舗に供給しています。
 

ただ、私たちのエネルギーに対する考え方は、再生可能エネルギーであればなんでもいいというわけではありません。クリーンな電力を作ると同時に、二次的三次的に地域社会や環境に便益がある電気を使っていきたいという理念があります。
再生可能エネルギーと一口に言っても環境に良いものばかりではありません。例えば森林を大きく伐採して作られたメガソーラーであるとか、バイオマス発電と言いながら環境への負荷がある資源を使ったりしているものもあります。そういったものを私たちパタゴニアは使いたくありません。
 
――再生可能エネルギーということだけではなく、環境に対してより影響が少ないエネルギーを選ばれているということですね?
 
篠:そうですね。パタゴニアは、サプライチェーン(物資の供給の一連の流れ)全体も含めて2025年にカーボンニュートラル、CO2を排出する量と吸収する量を釣り合うようにすることを目標にしています。
(https://www.patagonia.jp/blog/2020/01/2025-or-bust/)日本支社が消費する電力はそれほど大きくはありませんが、それでもカーボンニュートラルという目標を達成するためには、使うエネルギーを再生可能エネルギーにしていく必要があります。
 
地域の方々からきちんと受け入れられている発電所から、その地域にメリットがあるかたちで電力を調達したいと考えていて、パタゴニア京都の店舗はそうした条件をクリアした電気を使っています。
 
――パタゴニアのこうした取り組みはいま、どのように進んでいるのでしょう?
 
篠:パタゴニアの活動の中でもっともCO2排出量が多いのは製品作りの部分です。
輸送なども含めてCO2排出の97%ほどが製品作りに関わってくるんですが、パタゴニア日本支社は製造を担当していません。そのため、店舗やオフィスで使用する電気の削減などが主な課題になってきます。
 
再生可能エネルギーへの切り替えに関しては、パタゴニアが直接契約している日本の店舗はすでに切り替えが完了しています。また、京都以外でも、直接契約していないマルチテナントビルなどは別途オーナーさんと交渉して再生可能エネルギーの導入を働きかけています。
 
日本政府が2050年カーボンニュートラルを実現することを宣言したこともあって、これからの事業者は、それをどうやって達成していくかが重要になってきます。そうした条件のなかで、私たちが大切にしたいのは、できるだけ環境を保護しながら、自然の力を利用して解決していくということなんです。
 
 

エネルギーの選択は社会への意思表示

   

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掲載日: 2021.09.14

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