気候変動問題と宗教の役割|地球環境戦略研究機関インタビュー②<後編>

■気候変動問題に対する寺院や宗教の役割

 

(写真:ぱくたそ)

 
――ここまで多くのお話を伺ってきましたが、こうした気候変動問題に対して、寺院や宗教にはどのような役割が期待されているのでしょうか?
 
小嶋公史さん(以下:小嶋):IGESは『1.5℃ライフスタイル ― 脱炭素型の暮らしを実現する選択肢 ―』を通じて、単なるカーボンフットプリント削減ではなく、より社会や個人の豊かさや幸せに繋げるための脱炭素型ライフスタイルを提案しています。ただ、突き詰めるとかなりの部分が価値観に左右されると感じています。
 
「1.5℃ライフスタイルを実践すると、地球温暖化緩和以外にも、さまざまなメリットがありますよ」とお話ししていますが、将来世代や他者の幸福も重視する価値観であればメリットになることが、自分だけを軸とした価値観では単なる我慢で終わってしまう。「足るを知る」や「利他」といった価値観がもっと浸透し、それに基づいた生活を幸福だと感じられる人が増えるかどうかは、気候変動問題解決にあたっても重要だと思います。仏教をはじめとした宗教の持つ、価値観を転換させる力の果たせる役割は大きいのではないでしょうか。
 
杉原理恵さん(以下:杉原):自治体や地域の代表者は、選挙などのプロセスを経て、基本的には数年ごとに交代していきます。企業も存続のためには、短期的な利益を度外視するわけにはいかない部分があります。それに対して、仏教を含めた宗教は、100年や200年先、果ては生まれ変わった後など、長期的な視点で物事を見据えていますし、寺社や教会といった拠点も長年にわたって地域に物理的に根ざしています。この長期的な視点やつながりは、この社会において特徴的です。
 
気候変動問題がライフスタイルを含めた人間活動の結果であるのと同様に、私たちの持つ価値観の結果が私たちのライフスタイルです。仏教ないし宗教の持つ、哲学的視点や地域との長期的なつながりを活かして、ライフスタイルを変えるための価値観の転換をご支援いただきたいと思います。
 
――「価値観を転換させる力」と「長期的な視点」。そうしたものが宗教に期待されている、ということですね。
 
杉原:「他の網の目の存在があってこそ、網の目は網の目になる」という「網の目」の法話を業務中に思い出すことがよくあります(※杉原さんは浄土真宗本願寺派の関係学校を卒業)。たとえば、ある商品のサプライチェーンを考える際に、原料の採掘から消費して廃棄するまでの一連の流れを、自分に引き付けて線で追いがちですが、当然ながら、現実はもっと複雑で立体的な要素のつながりでできています。自分が大きな構造の一部である、サプライチェーンの一部である、社会の一部である、自然の一部である、といった大局的な意識は、個人の選択上も非常に重要だと思います。
 
――「物事は関係性によって成り立っているのであって、何かひとつが変化すればすべてが変化していく」ということを説いたお話ですね。私たちは個であると同時に、大きな全体の一部でもある。そうしたことを意識し、前提としていくのは、これからの社会においてさらに重要かもしれませんね。
 

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掲載日: 2021.10.02