未来のための金曜日|Fridays For Future Kyoto 寺島美羽さんインタビュー<前編>
FFFが目指す「気候正義」と「公正な移行」
――FFFは現在どのような理念に基づいて活動されているのでしょうか。
寺島:いくつかありますが、特に重要なことは2つあります。一つ目は、「産業革命前からの地球の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるために、科学的根拠をもとに施策を進めること」です。
パリ協定の目標や世界中の科学者たちの研究結果であるIPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)に基づいています。
二つ目は、「気候正義と公正な移行」です。気候危機は、すべての人が同じ要因を作り、被害を受ける問題ではありません。
先進国を含む一部の富裕層が、大量の温室効果ガスを排出して生活を送る一方で、世界の大部分を占める貧困層はほとんど温室効果ガスの排出に加担していないにも関わらず、一方的に気候変動による被害を受けます。飢餓や貧困問題も同様で、不平等な社会の仕組みそのものが気候危機の被害を深刻にしているのです。
様々な社会問題と密接に関連し合っていることを理解し、掻き消されてしまう弱い立場の人たちの声をしっかりと組み上げながら解決していく視点が必要です。
そして、まだあまり広がっているようには見えませんが、解決策には「公正な移行」という観点も大切です。気候変動対策として、省エネ行動は必要ではありますが、脱石炭・脱原発というレベルから消費するエネルギーを変えていかなければいけません。
その際、例えば、石炭や原発の関連分野で働いている人たちの雇用はどうするのか、どうすれば安価で安定した電力を社会に供給できるのかなど、ただ強引に訴えるのではなく、誰一人取り残さないようにフォローできるような公正な移行を求めることが大切だと思っています。
写真提供:Fridays For Future Kyoto
――なぜ、FFFは若者を中心とした活動なのでしょうか
寺島:気候危機は、時間が経てば経つほど被害のリスクが大きくなると言われています。
また、パリ協定で定められた「1.5℃目標」を達成するためには一刻も早い対策を講じる必要があり、私たち若者世代が、気候変動を止められる最後の世代だという大きな責任感を感じています。
また、今の国際社会では2050年の地球の状況を1つの大きな目安としていますが、その時私は49歳です。気候危機に晒され続ける社会で、まだ生きていかなければなりません。
私よりも後に生まれる将来世代には、もっと長い未来があります。その意味で、気候危機は今の若者だけに迫っている問題では済まされないと思っています。
――しかし、気候変動問題を「気候正義」や「公正な移行」といった手法で解決することを目指すなら、政治的で大規模なアプローチが必要ですし、そうした場合の決定権はもっと上の世代にありますよね。そういった世代と合流することはないんでしょうか?
寺島:そうですね。ですからFFFは気候変動問題の本質的な解決のために、政策決定者や企業へのアプローチを強めています。
もちろん気候危機はすべての世代の人々に関わり一緒に取り組むべき問題だと思っていますが、同時に私たち若者世代にしか発信できないこともあると思っています。幅広い世代の人と協力していくと同時に若者世代としての意見もきちんと持ちながら活動をしていきたいと考えています。
プロフィール
Fridays For Future Kyoto/ Japanオーガナイザー。
高校生の時に見たグレタ・トゥーンベリさんのスピーチに感化されたことを機に活動を始める。人と関わり、対話を通して気候危機を含む様々な社会問題とのつながりを思索した活動を作ることで京都の新しい運動について模索中。令和3年度京都市地球温暖化対策推進委員会委員。立命館大学国際関係学部2回生。