SNSなんてやらないほうが良い!?|松﨑智海さんに聞く、お坊さんSNSの始め方<前編>
SNSなんてやらないほうが良い!?
松﨑智海さんに聞く、お坊さんSNSの始め方<前編>
お寺でできる100のこと、今回のテーマはSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)。今日では私たちの日常生活において欠かせないものとなりました。近年では、寺院や僧侶がSNSを活用する事例も増えているようです。
ですが、なかなかフォロワーが増えない、炎上が怖い……などなど、SNSならではの悩みもありますよね。
今回は、「松﨑智海さんに聞く、お坊さんSNSの始め方」と題しまして、Twitterのフォロワー約2.5万人、SNSのスペシャリストである福岡県 永明寺住職の松﨑 智海さんに、寺院や僧侶によるSNS活用のコツをお聞きしました。
目次
- 1.種類はいっぱい!SNSの選びかた
- 1-1.SNSにはいくつか種類があります
- 1-2.それぞれのSNSの特徴
- 1-3.所属寺の特徴に応じて使い分けを!
- 2.人形を用意すると安全?SNSのリスクマネジメント
- 2-1.炎上のリスクと対策
- 2-2.個人情報の管理
- 3.分からないことはとにかく調べる。合わせてもらうのではなく、自分が合わせる
- 4.まとめ
アドバイザー
松﨑 智海さん:福岡県北九州市 永明寺住職。1975年生まれ。2000年より北海道 札幌龍谷学園高等学校教員、2005年より福岡県 敬愛高等学校教員。2014年より現職。著書『だれでもわかるゆる仏教入門』(ナツメ社)(2021年1月15日発売予定)
1.種類はいっぱい!SNSの選びかた
1-1.SNSにはいくつか種類があります
Q.SNSといっても、いろいろありますよね。
松﨑 智海さん(以下:松﨑):はい、SNSにはたくさんの種類があります。Twitter、Instagram、Facebookをはじめ、LINEやYouTubeなど、内容や特性も多種多様です。ここで大事なポイントは、ズバリ「使い分け」です。TwitterやFacebookといったそれぞれのSNS には特性があって、それを使い分けると効果的です。
例えば、Twitterは1投稿あたり140文字の制限がありますし、Instagramだったら文字ではなく画像の方が相性が良いというものですね。なので、全く同じ内容をそれぞれのSNSへ重複して投稿することは避けて、それぞれのSNSに合わせた発信をしたほうが良いと思います。
1-2.それぞれのSNSの特徴
Q.各SNSの特性を詳しく教えて下さい
松﨑:ここでは、特にメジャーなSNSであるTwitter、Facebook、Instagramの特性を紹介します。まず、Twitterは情報の拡散力が非常に強いです。Twitterの場合は「リツイート」と言って、自分が発信したものをまた別の人へ伝える機能があります。例えば私がTwitterでつぶやいた後、知らない人が次の人たちへどんどんと伝えられていくんですね。面白ければどこまでも伝わっていきますし、言語の壁を超えて海外までも情報が伝わっていきます。
Instagramは写真を主に取り扱うSNSです。情報の広がり方はTwitterと全く反対で、誰かが発信したものに対してフォロワーがそれを探してくるっていう仕組みなんですね。 Twitter は自分が発信したものが外に広がっていくんですが、それに対してInstagramは興味がある人が自分からこちらに寄ってくるようになっています。
その寄ってくるための一つのキーワードが「タグ」というもので、このタグを辿って自分を見つけてくれる。つまりは、その時点である程度、自分に対して興味がある人たちですよね。興味がある人たちが自分が発信した情報を求めてくれますので、Instagramは自分の興味関心を共有できる人を集める役割が期待できます。
Facebookは人脈を作るツールとして長けています。アカウントも実名で登録をするという縛りがあるので、自分と他人のコネクションを作るためのツールとして Facebook は有効です。また、小さなコミュニティを作りやすいので、例えばお寺同士のコミュニティづくりには有効ではないでしょうか。
1-3.所属する寺院の特徴に応じて使い分けを!
Q.所属寺の状況に応じて、使い分けが必要ということでしょうか?
松﨑:そうですね。所属する寺院の特徴に応じてSNSを使い分けると良いと思います。
例えば所属する寺院に文化財がたくさんあるなら、Instagramで画像を発信をしていく方法が有効ですし、ご門徒の方々と連絡のやりとりを行うのであればFacebookが有効ではないでしょうか。情報をひろく発信したいのであれば、Twitterがおすすめです。
2.「人形」を用意すると安全?SNSのリスクマネジメント
2-1.炎上リスクとその対策
Q.SNSを行う上でのリスクはどのようなものがありますか?またその対策も教えて下さい
松﨑:やはり、SNSを行う上でもっとも大きなリスクは「炎上」ですね。炎上とは、特定の情報に対して批判や非難が集中して収拾がつかなくなる状態を意味します。
特に、Twitterでは先ほど述べた通り、情報の拡散力が非常に強いため、それだけ炎上の可能性も高くなります。また、情報量も140文字という制限があるので、短い文章だけを切り取って解釈されてしまいます。こうした部分も、炎上しやすい理由ですね。いろんな考えをお持ちの方がいらっしゃるので、炎上とまではいかなくとも、Twitterは自身の発言が否定されることは少なからずあります。
炎上の対策としては、「自分自身を客観視する」ことでしょうか。時々、SNSで自分を売る人がいるんです。自分が有名になる事を目的としてる人、承認欲求を満たすためにSNSをする人がいます。しかしそれでは、自分の発言が否定されてしまうと、まるで自身の存在までも否定されたような感覚に陥ってしまうんですよね。
なので、「もうひとりの自分」つまりは叩かれても大丈夫な、客観視できる人形を用意するんです。そして、「もうひとりの自分」に喋らせるような感じで発信をしていくと、万が一炎上しても、精神的なダメージが比較的少なくなりますよ。
2-2.個人情報の管理
松﨑:もう一つ、SNSのリスクマネジメントとして大切なのが個人情報の管理です。お寺の情報と個人の情報が同一化しているのは、危険ですし、寺院の私物化にも繋がりかねません。なので、僕はインターネットで公開している電話番号とは別に個人用の電話番号を設けております。もちろん、個人用の番号は公開していません。メールアドレスも2つ用意してあります。これも炎上の対策と同じで、公開しても大丈夫なように個人情報の面でも「もう一人の自分」を用意しておくと安全ですね。
3.分からないことはとにかく調べる。合わせてもらうのではなく、自分が合わせる
Q.これからSNSを始める人で、何もわからない人はどうすればよいでしょうか?
松﨑:例えば、SNSの具体的な使い方は「SNS 使い方」といった具合で、インターネット検索をすれば見つかります。上手な活用方法もたくさん掲載されています。ただし、サイトによって内容が違うので、それを取捨選択して、実際の経験を通して自分なりの活用法を見出していく必要はあるでしょう。
松﨑:それができないという方は、もしかするとSNSをしないほうが良いのかもしれません。特に、サービスに自分を合わせるのではなく、サービスのほうが自分にあわせろと考えるタイプの人には、あまり向いていません。
SNSは自分を合わせていかないといけないツールなので、あまりそのあたりに興味がない人や、自分を変えようと思わない人はしないほうがいいと思います。
SNSにはリスクもたくさんありますので、やらなくても問題ない寺院はやらなくていいと思います。僕はこれからの伝道で、必ずしもSNSを使わなければいけないとは思っていません。
ただ、インターネットやSNSは一つの選択肢として活用する価値は大いにあるので、ご参考にしていただけると幸いです。
<まとめ>
多種多様なSNSの中で、特にメジャーなTwitter、Instagram、Facebookの特徴を教えていただきました。そして、いずれのSNSにも当てはまるポイントは、①それぞれの特性を理解する、②人形を用意する、③自分自身がサービスに合わせていく、ということではないでしょうか。
特に、電話番号やメールアドレスの情報は分けられても、住所までは分けられない場合、寺院や僧侶がSNSを行うリスクは非常に大きくなります。いま一度、SNSのメリットとデメリットを考えてみてはいかがでしょうか。
後編では、松﨑智海さんが積極的に活用されているTwitterでの情報発信のコツについてお話しいただきました。
<後編の記事を読む>
「継続は力なり」Twitter活用のコツとは|松﨑智海さんに聞く、お坊さんSNSの始め方<後編>