ゴールは「必要とされなくなること」?|NPO法人Life is Beautiful<後編>

「早よ死ねたら良いのに」と言わなくていい環境を

 

(写真提供:Life isBeautiful)

 
ーー山下さんと小林さんが思う、医療や介護の課題は何でしょうか?
 
山下:なんで「早よ死ねたらいいのに」って言う高齢者が多いのかなって、いつも疑問に思っています。理由を聞くと皆さん口を揃えて「何もすることがないから」って言うんですよね。
 
「長生き」って本当は喜ばしいことなのに、みんなしんどいものだと思っていますし、迷惑をかけるものだと思われていることに、すごく違和感があります。
なんで治療やリハビリをしてでも長生きをするのか?それは、例えばお孫さんが産まれた時に抱っこできたとか、ちょっとした「長生きをしてよかった」を味わうためだと思うんです。
 
また、高齢者が歳を重ねれば重ねるほど、「安心安全」という大義名分のもとに、制限や制約ばかりが設けられるんですよね。確かに、高齢者が転倒したら骨折する確率は高いです。でもそんなことは承知の上で、仮に骨折する可能性が高くても、その人が希望するなら歩いても良いと思うんです。
 
大事なのは、その方が歩くそばで、リスクの管理も含めて私たちがどういう風にサポートすべきかを考えることではないでしょうか。
「リスクのない環境」と言えば聞こえは良いですが、それは極端な話、その人を動けないように縛ることになってしまいます。それって、どうなんでしょうか?
 
ーー確かに、その人が希望しても「危ないから」と全部止められてしまうことは、本当につらいですよね。
 
山下:もっと高齢者の方々にも活躍していただきたいですよね。高齢であっても働けるなら働いても良いと思いますし、介護が必要な状態になったとしても、なんでも丸投げするのではなくて、ご自身でできることはご自身で行うほうが、心豊かな老後を過ごせるのではないでしょうか?
 
でもそれは、我々が変わっていかないと実現できないと思うんです。高齢者がもっと活躍できる社会を実現するには、適切なケアをおこなえる医療者や介護者がもっと必要ですし、社会全体の意識も変えていく必要があると思います。
 
ーーどういった方向に意識が変化すれば良いと思いますか?
 
山下:もっと備えをすることでしょうか。「備え」とは、介護や医療に関することで、ふと疑問に思った時にパッと調べられる環境を用意しておくことだと思っています。必要な時に必要な情報を得られる手段がある状態と言いますか。いくら社会で枠組みを整えたとしても、それを我々が運用・活用できないと意味がないわけですから。
 
小林:私が思う課題は、高齢者の居場所の確保でしょうか。高齢者がその人らしく生きられる環境があって欲しいなと願っています。
そのための枠組みは確かにあるのですが、逆に言うと枠組みしか作られていないんですよね。でも実際はその枠組みの中で人と人が関わることが大切ではないかと思います。
 
考え方のちょっとした違いが差別や摩擦を生んでしまうので、そうした考えの違いを互いに尊重できる、フラットな環境にできれば、その人らしさが尊重される社会になるのではないでしょうか。
 
ーー「その人らしさ」について、小林さんはどうお考えですか?
 
小林:「その人らしさ」は尊重されるべきだと思います。高齢者とひとくくりに言ってもさまざまです。老いていることを自虐している人もいれば、自由を望んでいる人もいるように、ポジティブな人もいればネガティブな人も居ます。それでいいし、良さも悪さも含めてその人らしさではないかと。言い換えれば「あるがまま」でしょうか。
 
ーー確かに、それぞれの個性を社会が受け入れられるかどうかが大事かもしれませんね。
 

目標は活動がなくなること?

   

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掲載日: 2021.11.25

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