心の垣根を超える音楽 キーワードは「隙間」?│やなせななさんインタビュー<前編>

 

心の垣根を超える音楽 キーワードは「隙間」?

 

大学時代のやなせさん(写真提供:やなせななさん)

 
――やなせさんが歌で思いを伝えられるときに意識されていることはありますか?
 
やなせなな:私は大学のときゴスペルのグループに所属していたのですが、そのとき指導されていた方に言われたことが「声に隙間を持たせないといけない」ということでした。
当時の私はゴスペルの歌い方をきちんと知らなくて、ゴスペルは声を張って歌う力強い音楽だと思っていたんです。でも、それだと他人の耳に声が入らないと教えていただきました。
 
「隙間のある声」とは、他人と混じっていけるような声質で、聴いている人の耳に自然に入る声のことです。ゴスペルはただパワフルに歌っているのではなく、実は聴く人が疲れないよう、絶妙に調節されています。だからこそ、初めて一緒に歌った人同士でも溶け合うことができるんです。つまり、ゴスペルは、自分さえよければ良いというスタンスでは歌えないんですよね。
今でも、そのとき教えてもらったことを意識して歌っています。実際、自分の声をただとどろかせるような歌い方は、お寺で歌うときには不向きなんです。
 
――人びとに届く歌のキーワードは「隙間」だったのですね。
 
やなせなな:大きい声や音を出して自分を見てくれ、自分の歌を聴いてくれ、と押し付けていたら、逆にみんな聴いてくれなくなります。まったく逆なんですよね。それは人間関係にも言えることかもしれませんね。
 
 

さいごに

 
人間は理性で本音を隠そうとしてしまいますが、本質的にはありのままの自分で他人と繋がりたいという思いもあるように思います。他人との間に凝り固めてしまった理性が音楽の持つ力で解かれたとき、本音をさらけ出せる瞬間が生まれる。
今回のインタビューでは、そんな音楽の価値が見えたのではないでしょうか。
 
 

 

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掲載日: 2022.05.09

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