心の垣根を超える音楽 キーワードは「隙間」?│やなせななさんインタビュー<前編>

 
――音楽の共感を呼ぶ力はどのような場面で発揮されるのでしょうか?
 
やなせなな:被災地支援をさせていただいたときに感じましたね。ご縁があって東北の被災地支援に行ったとき、歌があったからこそ、被災された方たちと本音で話すことができたと思いました。
 

被災地での様子(写真提供:やなせななさん)

 
被災地では、お坊さんだからといって誰もが最初から心を開いてくださるわけではありませんでした。でも、歌ってみるとだんだん張り詰めていた雰囲気がふわっと柔らかくなっていくように感じたんです。そうしているうちに、現地の方との間に自然にコミュニケーションが生まれるようにもなって。最終的に、私の歌が好きだと言ってくれる人も出てきたんです。「私の歌」と言っても、それは私の力ではなく、音楽が持つ、共感を呼ぶ力が大きく作用したのではないかと思いますね。
 
――まさに、音楽の力によって、人と人とがつながれたんですね。
 
やなせなな:支援の一環で、被災地寺院の和尚さんと行動しているとき、話を聞いてほしいと被災された方が来られたことがあったんです。私も一緒にお話を聞かせていただいているうちに、歌を通して少しでも悲しんでいる人、苦しんでいる人と気持ちを分かち合える空間を作りたいと思うようになりました。
音楽を通して心が通じ合ったり、初めて会った人同士が一生の友だちみたいに思える瞬間があったりする。こういった音楽で人の心の垣根を超えられたと感じるときが一番幸せです。
でも、そうした幸せは、歌手と僧侶の両輪だからこそ感じられるものだと思うんですよ。
 
――歌手と僧侶の両輪というと?
 
やなせなな:私が歌手という立場だけならそこまで踏み込めなかったんじゃないか、私がお坊さんだからこそできたことでもあるんじゃないかと思うんです。被災地では、お坊さんが行くと胡散臭いと思われる場合もありますが、一方でお坊さんになら話してみようかな、と思う人もいらっしゃいます。歌手としての役割、僧侶としての役割の両輪がうまく機能してくれたのが被災地支援だったと思うんですよ。もちろん、うまくいかないこともありましたが、活動を続ける中で、これこそが自分の一番やりたかったことだと確信しました。
同時に、自分のなかで長らくくすぶっていた、「あと一歩でメジャーデビューできたのに」という名誉欲がだんだん削ぎ落とされていったんですよね。メジャーデビューに歌うという目標から、聴いた人の琴線に触れてみんなが一つになるような歌をうたおうというモチベーションに変わっていきました。
 
 

やなせさんが歌う際意識していることとは?

   

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掲載日: 2022.05.09

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