変わらぬ故人への思い 変わりゆくお墓のカタチ|上野國光さん(日本石材産業協会副会長兼・㈱イオ代表取締役社長)インタビュー<前編>
変わらぬ故人への思い 変わりゆくお墓のカタチ
上野國光さん(日本石材産業協会副会長兼・㈱イオ代表取締役社長)インタビュー<前編>
週刊誌の見出しにも「樹木葬」や「墓じまい」といった言葉が踊る昨今。現代にふさわしいお墓の形や、少子化に対応した継承のあり方に関心が高まっています。この度、お墓の専門家である日本石材産業協会副会長(兼・㈱イオ代表取締役社長)の上野國光(うえの・くにみつ)さんにお話をうかがいました。
「人生最後の家づくり」イオ株式会社が目指すもの
(写真提供:上野さん)
――まず、イオ株式会社の事業内容を教えていただけますか。
上野 國光さん(以下:上野):イオ株式会社では、石材の加工・販売、霊園の企画・造成・開発・管理が主な業務です。イオ(io)株式会社の社名の由来は、inputとoutputから来ています。良いものを仕入れて、最高のものをお出しすることを目指しています。
私たちは、お墓を建立される方の「心」や「家族の思い」を記録し、表現する「人生最後の家づくり」だと考えています。そのため、お墓を立てられる方の思いを伺い、時間をかけて作り上げていきます。
――お墓に関して、寺院と連携されることもあるのでしょうか?
上野:お寺さんとの関わりとしましては、寺院内の未使用地の有効活用から、新たに墓地用地を取得するためのアドバイス、寺院の移転業務、お年寄りや車イスの方のためのバリアフリー参道整備までお引き受けしております。
また、開発にともなう諸条件の調査、未来予測、許認可の取得、墓地使用者の募集まで、総合的に業務を進め、寺院の信頼にお応えしています。墓地の地区を広げることにより、墓地数や檀家を増やし、寺院の経営基盤を安定させ、教化活動の充実と発展を図るためのサポートをいたします。
時代は大きく変わり、故郷とのご縁が無くなった人、家族をもたない自由な人生を選ぶ人、また、跡継ぎのいない人など、生き方も多様化し、お墓も自由な人生を選ぶ方が増えています。イオ株式会社では、こうした方々に新しい時代のお墓を提案できるよう、寺院の境内地内に供養塔や合葬墓を建立するお手伝いをさせていただいております。
パソコンの設計者から墓石業界へ
――上野さんがお墓の仕事に関わるようになった経緯を教えていただけますか。
上野:もともと私はNECでパソコンの設計を担当していましたが、マーケティングの会社に転職しました。あるとき石材店のクライアントから、墓石が売れなくなって困っているということでマーケティング調査を依頼されました。
調査をしているうちに墓石業界に興味を持ち、その会社では起業家を目指す風土があったため、借金だらけの会社でしたがイオ株式会社を買い取って墓石業を始めました。イオ株式会社はお寺さんとの付き合いもあったため、勉強しながらなんとかやってきました。
バブルがはじけた頃、墓地の多くは都心にはなく郊外にありましたが、都心に墓地の需要が増えていくことが予想できました。日本人のお墓参りは、お骨参りに近いものあります。骨がどこにあるかが重要なのです。郊外ではなく、お参りしやすい都心に回帰するという流れでした。